INFRA NOISE DIGITAL RECONSTRUSTOR DR-3000

大阪府豊中市にあるオーディオ・ビジュアル関連アクセサリー専門メーカー“インフラノイズ”は、マニアなら「知る人ぞ知る」古くからのブランドです。今までに様々なアクセサリーを発売してきましたが、昨年発売した、アナログ・リコンストラクター/AR-2000(通称アナリコン)は、その効果の高さと音の良さで爆発的なヒットとなりました。
そのコンセプトを「デジタル信号」の改善に取り入れることにチャレンジ、完成したのが今回テストした“DR-3000”です。

DR-3000

DIGITAL RECONSTRUSTOR

【SPEC】

  • 音声入力:AES/EBU(XLR)×1、SPDIF(RCA)×1、SPDIF(BNC)×1、光デジタル×1
  • 音声出力:AES/EBU(XLR)×1、SPDIF(RCA)×1、SPDIF(BNC)×1、光デジタル×1
  • 主な機能:ローカットフィルター(デジタル領域での不要低減カット)、フェーズインバーター(デジタル領域での位相反転)、インプットセレクター(4ポジション)
  • 外形寸法:482.6W×50H×275Dmm
  • 質量:2.2kg
  • 発売時定価 99,000円(税別)


電源スイッチ・フェイズ切換・ローパスフィルター


入力セレクター


リアパネル・信号入/出力部


信号出力部の拡大

この製品は、CDトランスポート等のデジタル信号の電気信号データを一旦光信号データーに変換し、電気的にアースから絶縁することでアースライン等からデータに混入する不要な電気的雑音を取り除去して、信号を高純度な信号に”リコンストラクト(復元)”する装置です。
この機能は、再生時のみならず、録音時、マスタリング時などデジタル信号を扱うすべてのシチュエーションで使用することが可能で、かつAES/EBU、SPDIF(RCA)、オプティカル(TOS)各入力/出力、計4種類のデジタルフォーマットに対応した完全プロ仕様となっています。嬉しいことに、RCA(BNC)入力されたデジタル信号を光(TOS)やAES/EBUのフォーマットに変換して出力したり、あるいはその逆も可能な大変便利な装置です。
また、デジタル信号の伝送を単なるコンピュータ的なデータの転送に終わらせないために、音響用デジタル信号専用のオプトカプラーを利用した回路を開発し、アイソレーション回路を従来機種より練り直して、二段階の絶縁を行うという、ダブルデジタル・アイソレーターを採用するなど「オーディオ的配慮」も存分に練り込まれています。

マテリアル ★★

○ ここは良かった

ボディ全体がアルミパネルや木製のパネルで構成されており、すべて非磁性体の材料で作られている。デジタル信号のような「高周波の信号」を扱う場合には、ボディーはへたに金属で作るよりも、非磁性体で作る方が電磁波による不要な共鳴などが発生しないため有利。
その反面、外部に電磁波ノイズを放射する恐れがあるが、内部のICや基盤に輻射ノイズ対策が施してあれば大丈夫。残念ながら内部を開けられるようになっていないので、対策を確認できなかったが、実際の使用で電磁波ノイズが漏れている悪影響を全く感じられなかったので、問題ないと思われる。
電源ケーブルが着脱式になっている。

X ここは残念

業務機仕様と言ってしまえばそれまでなのだけれど、筐体パネルの角がきつく、機器に傷を付けたり、怪我をしたりする恐れが高いので、パネルの角は丸めて欲しかった。

機能・発展性 ★★★★★

○ ここは良かった

デジタル・リコンストラクターとしての働きはもちろんだが、各入力のデジタル信号のフォーマット変換ができるのは大変便利。
例えば、同軸デジタル入力(RCA/BNC)を光(TOS)やAES/EBUで出力したりその逆も可能。また、ひとつの入力が4つの出力端子から同時に出力されるので、高音質なデジタル信号分配機としても使える。
何よりも便利だと感じたのは、ジッターの多いデジタル信号を入力しても高精度な低ジッターの信号に変換されるところ。私が愛用している“ベルトドライブ・トランスポーター”は、音は抜群によいもののベルト・ドライブ特有のジッターがさけられず、WADIAやdcsなどの一部の高級DACやCDRやDATへ出力すると、それが音切れやノイズ発生の原因となってしまい使えなかった。しかし、DR-3000を間に繋ぐと、それが見事に解決する!
デジタル機器間の伝送や、デジタルダビング時におこりがちな相性のミスマッチによるノイズや音切れから完全に解放される。それも、一切の音質ロス無しに!
この変換機能と、ジッターキャンセル機能だけでもDR-3000は絶対にお薦めできる!

X ここは残念

表示文字が小さく見づらい。
リアの入出力端子の形状が同じ、プリントの色も同じで入力と出力を混同しやすい。

評価 ★★★★★

○ ここは良かった

解像度の高さをほとんど損なうこと無しに、音質の透明度と分離感(空間の広がり)が大きく改善される。音の立ち上がりもほとんどマスキングされない。AR2000よりも格段に高いクォリティーを感じさせる。
音と音との間に隙間ができて、直接音とエコーが綺麗に分離する。楽器の倍音構造が明瞭になり、演奏者の息づかいや気配が自然に感じられるようになる。
かなり良いことづくめだが、でたらめなアクセサリーが多い中で本格的な音作りと、それによるデメリットをほとんど感じさせないのは素晴らしいと思う。
フェイズ切換スイッチは、初期にあった“逆位相録音のCDソフト”を再生するときにはなくてはならない機能。
デジタル信号に混入する不要な低周波のノイズを除去するためのローパスフィルターは、私のテストでは全く音質に変化がなかった。それはつまり、素晴らしく機能しているという証明。なぜなら、“もともとノイズの混入していない信号には一切影響を与えない”という証明だから。 この機能を、もっと精度の低いデジタル信号、たとえばBSチューナーやDVDなどからのマルチチャンネル信号に使えば、大きな効果をあげられる可能性がある。
録音などで、どうしても信号ケーブルを引き回さないといけないときや、音質劣化無しに信号の分配が行えるメリットは、業務では計り知れないはず。私の録音装置のデジタル・インターフェースとして、DR-3000を採用を即決した。

X ここは残念

音の立ち上がりのエッジが、ほんの少し鋭さを失う。得に付属の電源ケーブルを使うとその傾向が顕著になる。
本体価格は¥99,000とリーズナブルだと思えるが、それなりの電源ケーブルと、それなりのデジタルケーブルを奢ってやると、20万近い価格になりかねない。まあ、それは最高の音質を求める代償だと言ってしまえばそれもそれまで。
つまり、そこまでしたくなるほどの音質をDR-3000には認めざるを得ないということなのだ。

音楽的評価 ★★★★★

○ ここは良かった

音の繋がりが良くなり、ライブ感が増す。デジタル特有の刺々しさがなくなり、解像度はほとんど落ちない。ボーカルや楽器が目の前で演奏されているような“濃い気配”を感じられるようになる。
決してオーバーデコレイトにならないところに、インフラノイズ社長の秋葉氏の音楽に対する見識が感じられる。

X ここは残念

ほとんど問題がない装置だと思う。しかし、この装置だけでなく、電源、信号ケーブルなどが、オーディオ機器自体(本体)の価格に対して高すぎるのは何とかならないかといつも思う。
まあ、私もオーディオ機器を製造販売しているから、その理由が“パソコンや他の家電機器に比べると圧倒的に売れる数が少ないため”だと言うことはわかるし、納得している。
この問題を解決する方法は、たったひとつです。皆さん、もっと音楽好きのオーディオ仲間を増やしてください。

全体評価 ★★★★

デジタル機器を中心に音楽を聞いている人で、コストをかけることができる人には“必需品”といえるべき装置だと思う。
しかし、何が何でも“間になにか入るのはイヤ!”というお客様はご遠慮頂く方がいいかも知れない。もともと、DR-3000は“音質改善=音質を変化させる”アクセサリーだということを忘れるわけにはいかないのですから。

2001年10月19日 (清原 裕介

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