MULTI MEDIA PLAYER TEST

Sound Quality Test

SONY DVP-S9000ES2001年になって、SACDとDVDオーディオに対応したマルチメディア・プレーヤーが次々と登場しています。その中から、5機種を選んで音質と画質をテストしました。

marantz SA-1

  • 発売時定価 ¥550,000(税別)
  • CD/SACD
  • 搭載メカ:SHARP

marantz SA-14

  • 発売時定価 ¥250,000(税別)
  • CD/SACD
  • 搭載メカ:SHARP

marantz DV-12S1

  • 発売時定価 ¥250,000(税別)
  • CD/DVDオーディオ/DVD
  • 搭載メカ:PIONEER

LUXMAN DU-10

  • 発売時定価 ¥880,000(税別)
  • CD/SACD/DVDオーディオ/DVD
  • 搭載メカ:PIONEER

SONY DVP-S9000ES

  • 発売時定価 ¥200,000(税別)
  • CD/SACD/DVD
  • 搭載メカ:SONY

marantz SA12S1

  • 発売時定価 ¥380,000(税別)
  • CD/SACDマルチチャンネル
  • 搭載メカ:PHILIPS

CDの音質

SA-1

1Bit特有のシャープさがあるが、やや立体感が乏しく平坦に聞こえる。SHARPのSACDプレーヤーに音色が似て、クールな表現。癖のないオールラウンド・プレーヤーだが、音楽的に熱くなりにくい。

SA-14

SA-1よりもコクがあり、躍動感、立体感も十分で、単独のCDプレーヤーとしても価格以上の価値を感じさせる音質。 どちらかといえば、穏やかな音楽やクラシックに向いていると思う。

DV-12S1

一聴して解像度の高さに耳をとられる。DVDに対応した、ピックアップの読みとり精度の良さが抜群に高いと感じられ、とにかく細かい音が良く聞こえるのは驚き。
高音のヌケのよさと芯の強さは、同じメーカーのSA1やSA14と全く違う印象を与え、POPSやJAZZに向く。
ステージのそで(楽器のすぐ近く)で聞いている印象が強く、音がグングン前に出てくる。それはそれで気持ちいいのだが、長時間の視聴ではやや聴き疲れする感じをおぼえられるかも知れない。

DU-10

CDの再生では、他の4機種を圧倒する「濃密さ」を持っている。LUXMANお得意の“FEプロセス”をONにすると、透明度がさらに高まり、今までのLUXMANのCDプレーヤーの中でも圧倒的なベストサウンドが実現する。
PIONEERのメカで再生するCDソフトは解像度が抜群に高く、また音のエッジが鋭い。それが、LUXMAN特有のエッジの甘さ、ヌケの悪さをうち消していると感じられる。
音場には、エッジの立った明瞭な立体感が伴い、さらに音楽表現が濃密。21世紀のLUXサウンドここにあり!という感じのCDプレーヤー。演奏者の気配がじんじん伝わってくる。
伝統のラックスサウンドには、やや押しつけがましさを感じなくもなかったが、それを良しとするLUXMANのファンには断然お薦めだし、PIONEERメカの持ち味がLUXMAN臭さをうまくうち消して、その良さだけを引き出しているように聞こえる。一体型ではベストCDプレーヤーのひとつに加えて良いと思える、抜群のCD音質。

DVP-S9000ES

SONYのCDに特有の高域がキラキラするような癖が少ない。やや平面的な感じはあるものの、解像度は高く、10万円クラスのCDプレーヤーに匹敵あるいは凌駕するほどの本格的な音質。十分音楽を楽しめる。 失礼かも知れないが、オーディオ専用モデルの、SCD-1やSCD-777ESよりも癖が少なく、音楽に色を付けない9000ESの音質が私には好ましく聞こえた。

SA-12S1

非常に暖かく、音楽性が豊かな音というのが第一印象。「音」ではなく、「音楽」が心に響いてくる。演奏者の気配が手に取るように伝わり、音楽(コンサート)を聴いていると実感させられる音作りは、まさに“PHILIPS!”の正当派サウンドそのもの。
しかし、このプレーヤーの凄いのはそれだけではない。再生される「音」自体のクォリティーも非常に高いことに驚かされる。Fレンジ・Dレンジはもちろんのこと、S/Nやチャンネルセパレーションの良さなど“これがCD?”と聞き直したくなるほどレベルが高い。特に、解像度(音の細やかさ)は非常に高く、「こんな微細な音までディスクに入っていたのか!」と何度聞いても驚くほどだ。
LHH1000から伝統的に引き継がれてきた“PHILIPS-SOUND”の音楽性が新生代のデジタルシステムと融合し、このモデルで完全に次世代に向け開花した感じがある。
本当にいい音だ!音楽ファンに心からお薦めしたい。これこそ「音楽を聴くため」に生まれてきた、現時点で唯一のSACDプレーヤーだ。さすが、PHILIPS製品は血統が違う!

SACDの音質

SA-1

CDの再生と同じ印象。SACDのマルチレイヤー(CDとSACDの信号が一枚のディスクに録音されている)ディスクを、CDとSACDのモードで再生して比較しても、「???」思ったより差が少ない。この程度の音質差なら、電源ケーブルや信号ケーブルを交換した方が音を良くできるのでは?と感じる程度の音質差だ。まあ、言い換えればそれだけCDの音質が頑張っていると言えなくもない。

SA-14

SACDソフトの再生においても、SA-1と同等の傾向が見られる。定価がSA-1の半分であることなどみじんも感じさせない立派なサウンド。 なによりも1Bit特有のイヤな癖、音が平面で広がりがない、躍動感がない、という悪癖がほとんど感じられないのを高く評価したいと思う。逆に、1Bitの良さである音の濁りのなさ、解像度の高さがメリットとして出ているのは素晴らしい。
だたし、標準の“脚”は全くいただけない。ローゼンクランツやAIRBOW/WOOD-BOYなどの音楽的に良くチューニングされた“脚”に変えることで、俄然まとまりの良い芳醇なサウンドに変貌する。さらに、電源ケーブルをAETやS/Aラボ、AIRBOWの製品に交換すれば、50万クラスのCD/SACDプレーヤーに匹敵、凌駕するサウンドクォリティーを得ることができる実力モデル。

DV-12S1

SACDは再生不可。

DU-10

SACDの音質は、はっきり言って酷い。CDの音が良かったのに比較して見るべきところが全くない。マルチレイヤーディスクを再生すると、CDモードの音質がSACDを上回って感じられる。いったい何のためにSACDモードが搭載されているのか理解できない。ベースモデルとなった、PIONEER/DV-AX10のSACDコンバーターをそのまま使っているのだろうか?
とにかくCD再生のレベルの高さと比べると、このSACD再生のレベルの低さは俄に信じがたい。

DVP-S9000ES

CDの再生に比べて、明らかに音が細かくなり、細部の表現力も増す。CD再生と同様にSACDの音質もSONY特有の癖の少ないクリーンで好ましいもの。
やはり、個人的には、SCD-1やSCD-777ESより9000ESのサウンドが好ましく感じられる。

SA-12S1

今まで、聴かされてきたSACDとはいったい何だったんだろう?このプレーヤーを聞いた後で、これ以外のSACDプレーヤーで同じソフトを聴くと、本物とコピー食品ほどの「味わいの差」を感じてしまう。
それほど、このSACDプレーヤーの音質は素晴らしいの一言に尽きる。一聴した瞬間に「ああ、これがSACDの本当の音なんだなぁ」と心から納得できる製品に始めて出会えた気がする。そして、その音質は、「アナログ・レコード」をあらゆる意味で遙かに凌駕している。
CDでは感じられなかった演奏の気配、聞こえなかった細やかな表現が圧倒的「濃密さ」で、眼前に繰り広げられる。
音の粒子が信じられないほど細かく、立ち上がりが鋭く、クリアーで、演奏者が本当にそこにいるように感じられる。演奏が終わったら、演奏者に拍手を捧げたくなる。
これが、これこそ、私が求めていたCDを圧倒的に凌駕する新生代のデジタルサウンド! 「感動」という言葉が「良い音のオーディオ機器」にふさわしい形容詞であることを、久しぶりに、そして改めて実感できた。本当の感動を聴かせてくれてありがとう!

DVDオーディオの音質

SA-1

DVDオーディオ再生不可。

SA-14

DVDオーディオ再生不可。

DV-12S1

DVDオーディオの再生音の傾向は、CDの再生音とほとんど同じだが、圧倒的に音が細やかになり、CDのフォーマットでは到達できない高音質を感じさせる。
しかし、メディアの音質がここまでクォリティーアップしても、それを生かしきれる「部屋」はほとんどないと思えるし、実際問題、良い部屋でチューニングされた装置で聞くCDソフトと、普通の部屋で聞くDVDオーディオなら、圧倒的に前者の音楽的満足度が高い。フォーマットが良くなれば、何でもかんでも音が良くなるみたいな、音響メーカーのコマーシャルには疑問を通り越して。強い憤りを感じてしまう。なおかつ、DVDオーディオのソフトはほとんど発売されていないのだから、あわててDVDオーディオプレーヤーに手を出す必要はあるのかどうか疑問が大きい。同様の意味では、SACDも同じだと思う。ハード先行、ソフトなおざりの現状に大きな疑問と不満を投げかけたい。

DU-10

やはり、CDソフトの再生と傾向は同じ。DA変換のプロセスは、CDとDVDオーディオでは共通のはずだから当たり前といえば当たり前。 この音質を聞いてしまうと、SACDっていったい何のためのフォーマットなのかわからなくなる。

DVP-S9000ES

DVDオーディオ再生不可。

SA-12S1

DVDオーディオ再生不可。

画質(S端子出力/インターレスで比較)とサラウンドの音質(dtsデジタル出力)

SA-1

DVD再生不可。

SA-14

DVD再生不可。

DV-12S1

結論から先に言ってしまおう。DV-12S1は、DU-10と同じPIONEERのDV-AX10のメカを搭載しているらしい。DVDの再生に入る前の、「初期設定のメニュー画面」は、DV-12S1とDU-10では全く同じもであることからそれがうかがえる。画質も、DU-10とほとんど差がないレベル。
デジタルで出力するdtsの音質は、DVP-S9000ESと比べると2倍くらい情報量が多く感じられる。音の広がり、音の動き、鮮烈さ・・・音質を優先するなら、DVP-S9000ESには戻りたくない。

DU-10

中間調の再現に優れ、画面の奥行きがきちんと出る。シネマライクで好ましい色調。
しかし、「グラディエイターの森の画面」でカメラがパンニング(水平にゆっくり移動)されるとき、木の枝が完全にブロックノイズ化し、ストロボ・モーション調にもやもや動くのは興ざめする。たぶん、DV-AX10も同じなんだろうと思うけれど、これはDVDに特有の悪癖であり、それが野放しなのは全く頂けない。(ただし、このグラディエイターのもやつきは、圧縮比が高くビットレートの低いデモディスクのみ発生し、通常に販売されているDVDソフトでは発生しないので、通常ほとんど問題とはなりません。というよりも、後述するDVP-S9000ESだけが極端にブロックノイズに強いのです。)
しかし、このブロック・ノイズは、「細かいものが流れるように動く場面」以外ではほとんど発生しないので、そういう部分が気にならない人や、いままでブロック・ノイズ自体の存在に気づかなかった人は、あえてそういう意地悪な見方をしなければ、特に大きな問題にはならないはず。
現行発売のDVD中では、色調や立体感の出方はトップクラスでとてもシネマライク。デジタルで出力するdtsの音質は、DV-12S1よりさらに濃密で素晴らしい音場が展開する。

DVP-S9000ES

このモデルにSONYは、ブロック・ノイズキャンセラーなる特別の回路を開発し、他メーカーを引き離す圧倒的な高画質を実現すべく満を持してDVP-S9000ESを発売した。上記の2機種に比べて、まったくブロック・ノイズを感じさせないのはさすが!
たしかに、ブロック・ノイズキャンセラー回路の副作用なのか細かい場面が動くときにやや「画像のエッジが甘くなる」が、盛大にブロック・ノイズが発生することを思えば、全く問題にならない。
解像度も高く、色抜けも良く、この画質とCD/SACDの高音質を、たった¥200,000で実現しているのは驚き。 確かにDVDプレーヤーの販売台数とCD/SACDプレーヤーの販売台数には大差があるはずで、コストパーフォーマンスで優れるDVP-S9000ESの価格をおさえられるのはわかるが、それではピュア・オーディオモデルの存在価値を疑ってしまう。
デジタルで出力するdtsの音質は、DV-12S1やDU-10には届かないが、映像の素晴らしさがそれを補ってあまりあると感じさせた。

SA-12S1

色が濃く、発色が美しい。例えば、バイオリンのニスの色や、会場を彩る花束のカラフルな色彩が、最上級の色鮮やかさで再現される。
音も本格的なら、絵作りも本格的。
「本物」を知る大人のための製品。「芸術」を知る大人のための作品。素晴らしい製品だと感じる。プログレッシブ出力がないが、そんなもの必要ないと感じさせる圧倒的な表現力がS出力で実現されている。

私なりの結論

この5機種のどの製品を選択するのか?は、その使い方によって大きくわけられると思う。
まず、DVDの映画ソフトを見るためにマルチメディア・プレーヤーを買うなら、迷わずDVP-S9000ESをお薦めしたい。何よりも画質が良い!そして、CD/SACDの音質も十分以上に楽しめる。
家庭用としては、デザインの斬新さも含め、問題なくこの製品が最良の選択だと思う。
SACDとCDのどちらもいい音で聞きたい人には、SA-14をお薦めしたい。同じメーカーで定価の高いSA-1より音質はよいと断言できるレベルに仕上がっている。
SA-14には、他社のSACDプレーヤーとは一線を画する「音楽表現能力」を感じる。CDソフトの再生のためだけに、¥250,000を支払っても決して後悔させない音質と音楽性。音楽ファンにお薦めしたい製品。
SACDをほとんど聞かず、CDソフトの再生が中心になる人には、DU-10またはSA-14をお勧めしたい。特に、DU-10のノーマルCDソフトの解像度は素晴らしいと感じる。同じLUXMANの、CD再生専用機D-10を明らかに凌駕している。
音の細やかさと、空間情報の濃密さは、DV-12S1も同等だから、きっとPIONEERのピックアップメカニズムが優秀なのだろう。
SACDの再生をあきらめる(DU-10のSACD再生も、ただ鳴っているだけに過ぎないが・・・)なら、DV-12S1を候補にいれてもいい。SA-14よりも確実に解像度が高い。そのぶん、ややハーモニーが分離しすぎる嫌いがある。個人的には、調和の取れたSA-14に軍配を上げたいが、この「解像度の高さ=今まで聞こえなかった音が消えるようになる」魅力には抗しがたい部分があるのも、又事実。聴き比べて欲しい。
CDとDVDオーディオを中心に楽しむなら、DV-12S1をお薦めしたい。DVDオーディオに関してはDV-12S1の能力もDU-10にかなり近くなるが、価格は1/3以下というリーズナブルさ!
問題は、DVDオーディオのソフトがほとんど発売されていないと言うことだ!!
2001年10月19日

追記

2002年になって、SA-12S1のテストを追加した。この製品を実際に聞くまでは、SACDマルチChソフトに対応しているプレーヤーの第1号機と言うことで、「ああまた中途半端に、新規格の製品が発売されたのか・・・」という程度にしか考えていなかった、私の陳腐な事前の予想を遙かに覆す結果となった。
まず、CDの音が素晴らしく良い!個人的にはAIRBOWの製品以外で、長時間の鑑賞に堪え、一枚のソフトを延々と聞き続けても、常に新たな音楽的感動を感じ取れる初めてのCDプレーヤだと感じられる。とにかく、その「演奏者の気配の出し方」が素晴らしく上手い。このモデルを設計した人、音を決めた人は、「素晴らしい音楽家の素養に恵まれた人」・「本物の芸術(音楽)を知る人」であることは間違いがない。これほどの音が、偶然に出るはずはないのだ。
そして、SACDを聴いたときにその驚きは「感動」に変わる。ついにレコードを捨てる決心がつくときがやって来たのだ!もちろん、すでに持っているレコードを捨てる必要などありはしないが、もし自分がレコードとして持っている「演奏(音源)」がSACDで発売されたなら、私は間違いなく同じ演奏を2度とレコードで聴くことはないだろう。
さらに、SACDマルチChで収録された最新の「ガムラン」を聴いて、私の目指す夢と希望がオーディオに蘇った!
眼前に広がるのは、紛れもない「ガムラン」。CDで聴く「冷凍食品のように生気の抜けたガムラン」ではない。実際にガムランの生演奏を聴いたことはないが、それでも「ガムラン」がどれほど素晴らしい「芸術」であるかは、瞬時に、そしてその内容の深さまでも容易に理解できる。いや理解ではなく、心にダイレクトに伝わってくる。
音が心に響き、自然と涙があふれ出すような感動に包まれる。ああ、この音楽を聴いて良かった、ああ。この演奏と出会えて良かったと、心から感謝の気持ちでいっぱいになる。
「SACDマルチチャンネル録音」、唯一このフォーマットなら、素晴らしい演奏を、ありのまま、素晴らしいまま、後世に記録として残しておける。素晴らしい芸術の遺産として・・・
あわよくばいつの日にか、こんな素晴らしい演奏に触れた若々しい感性が、世界に羽ばたける音楽家とならん事を夢見て・・・次世代に素晴らしい遺産を託していける。そんな夢すら見させてくれる、素晴らしい製品に出会えたことを本当に幸せに思う。
2002年8月17日

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