人生が変わるほどエモーショナルな音楽・映画の再現を目差して

私がこの職業を選んだきっかけは、「音楽が好き」なことと「人の喜ぶ顔が見たい」その二つです。大阪の商家に生まれ、物心付いた頃から「商売」を見て育ち、何の苦労もなく大学を出て「金融機関」に2年間勤務し、生まれて初めて「本当に苦しんでいる人」を知りました。お金がなければ生きては行けない。生きるためなら平気で人を騙し、文字通り「人を食って生きる」そうものにも人間はなれるのだと身をもって体験しました。そして、それが他人事ではなく「自分の心の中にもそう言う残酷で冷酷な部分がある」ということにも気づきました。
私たちが「生きてゆく」ためには、様々な犠牲を伴います。人間が食べるために育てられ、殺される者達。そして、その命を奪うことを職業にする人達。それに「目をつぶりながら」、あるいは「そんなことに気づきもせず」肉を口に入れて生きている私達。自分たちの利益のために、人の国まで攻めて行き殺戮を行って、罪の意識すら持たずに、その行為を正当化する大国。優しさや思いやりなど微塵も持たず、ただ自己の利益のために破壊や略奪を続けるのが人間である、それが「現実」だと知り、「いいところのボンボン」は、ある意味で精神的にどん底にまで追いつめられました。それまで、目に見えない力に守られてのほほんと育ち、気づきもしなかった「現実」を知ったからです。
もし、そのまま「暗黒面」に押しつぶされていたとしたら、今の自分はなかったと思います。何が自分を救ってくれたのか?それは、「愛」の存在です。「良心」と言い換えても良いでしょう。人は確かに「残酷で冷たい心」を持っています。でも「思いやりがあり温かい気持ち」も持っています。その両面があり、人間の心は形成されています。生まれながらに、持っているものを否定することも拒否することもできません。「悪」と「善」、「闇」と「光」その「バランス」こそ、人間にとって一番大切なものだと知ることができました。
さて、こんな話をすると私はまるで「宗教家」のようですが、私はどんな「宗教」にも属していません。もちろん、人の心を知る上で、いろいろな「宗教」を独学で調べたり、あるいは学んだりしましたが、特定の「宗教」に嵌ったことはありませんし、今後もそのようなことはないでしょう。私が言いたいのは、人の心には「両面」があるということ。それを否定したり拒否することはできないこと。そして、そういう「人の心のあり方」は、ここ数千年何も変わっていないし、今後も急には変わらないと言うこと。付け加えるなら、人は「悪には染まりやすく」、「善を続けるのには大きな労苦が伴う」ということ。世の中は「善」ではなく「悪」によって支配されやすいこと。それが正直な今の自分の考えです。こんな話は「音楽再現」とは、まったく関係がないだろう!?そうお考えですか?それはまったく違います。
健全に生きてゆくために心のバランスを取るため必要なもの、それが「希望」であると考えます。未来がとても暗いものだとしたら、人は生きては行けません。未来が明るいものだと信じられるからこそ、明日は今日より良い日になると信じられるからこそ、私たちは今を一生懸命生きることができるのだと思うのです。その「希望の光」を私たちに投げかけるものこそ「人の愛」だとおもいます。「愛」などと簡単に口にするのは、かなり抵抗があるのですが、ここで言う愛とはかなり広い意味での「人類愛」のようなものとお考え下さい。
生きてゆく上で欠かせない「希望」や「愛」。良い音楽や、良い映画は、単なる「娯楽」の枠を越えて「それ」を与えてくれます。人の心を動かす「音楽」や「映画」は、時空を越えて「希望の光」を与え続け、時代に磨かれて、さらにその光を増し輝き続けるのです。そういう作り手の思いが深く込められた、素晴らしい「演奏」や「映画」の本当の「輝き」を一人でも多くの人に伝えたい。それこそ私がこの職業を選んだ最も大きな理由です。
私は「音楽」を聴き「映画」を観て「感動」して時には涙を流しますが、そう言う「感動」を自分だけのものにするのではなく、一人でも多くの人と「分かち合えれば」その感動は、何倍にも何十倍にも大きくなります。それを人生の喜びと感じ、職業としてそれを成し遂げることができればどんなに素晴らしいだろう?その思いが「形」となったのが「逸品館」という会社です。
「逸品館」は、一方通行の組織ではありません。「作り手(メーカー)」と「使い手(ユーザー)」を等しく繋ぎ、意見を交わし、よりよい製品を選び、よりよい製品を作り出す。販売店、専門店というビジネスを通じて、同時にそう言う「コミュニケーションの場」でありたいと考えています。もちろん販売という業務の中で「やりたいこと」と「利益を生むこと」のバランスも大切です。そういう、様々な要素が混ざり合った中で、お客様自身の「喜び」を見つけていただければ、我々にとってそれ以上嬉しいことはありません。

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