Esoteric、P-2S/D-3を覚えていらっしゃるだろうか?当時のEsotericの音は柔らかく、真空管アンプのような艶があったように思う。P-2Sに搭載されていたCD読み取り時のジッターを軽減するEsoteric伝統のVRDSメカニズムは、当時最も先進のデジタルプレーヤー専門メーカーのWADIAに認められWT-2000Sに搭載された。WADIAの音については、賛否両論あるだろうけれど、個人的には“PRO”と“SYSTEM 2000S“だけが好きでその他のモデルは、私には音が硬すぎた。WADIAにメカニズムを供給することで始まった、WADIAとの提携でEsotericのサウンドはどんどん硬くなっていったように思う。
それからしばらくして、アメリカの小規模オーディオメーカーの例に漏れず(ここ15年の間に隆盛を極め、その後消えていった小規模な高級オーディオメーカーは、ほとんどアメリカ。例えば、COUNTER-POINT、AUDIO-ALCHEMY、APOGEEなど)WADIAは、力を失った。しかし、Esoteric内部では、WADIAから受け継がれた技術志向の流れは止まらなかった。そして発売された究極のCDトランスポーター“P-0”でその流れは究極に達した。P-0は、確かに素晴らしい製品だったが残念ながらその音や外観、作動音が感じさせたのは、コンサートの雰囲気からはかけ離れた「機械油の臭い」だった。
そう感じたのは私だけではなかったのだろうか?販売が好調だったにもかかわらず“P-0s”をターニングポイントにEsotericは変わった。確かにP-0sやP-01/D-01の音は、機械的な硬さがあって情緒は薄かった。だが、P-03、D-03は明らかに違う。Esotericが技術の粋を尽くして生み出したP-03、D-03の登場で、国産オーディオが初めてすべての海外製品を凌駕してそのジャンルの頂点に立った感がある。
この音質変化にはAIRBOWが一枚噛んでいると言わせてもらっても罰は当たらないと思う。なぜなら、他誌のテストでも遙かに高額なUX-1よりも音が良いと評価されたほどの“VRDS-15の改良モデル”は、彼らの目差していたものとは異なる「音楽性」の実現とそれを可能とした技術的な手法が彼らにとってもかなりの驚きだったからだ。その実力が認められてAIRBOWとEsotericは、音決めについてあるいは技術について水面下での交流を開始した。もちろん、お互いに「流出させたくないノウハウ」があるし、またあまりに深く交流すると、互いの独自性を損ねる危険があるため、その交流は設計の細部にわたるようなものではなく、漠然とした「こういう音をお客様が好んでいらっしゃる」、あるいは「この部分が音質にこんな影響を与えているらしい」というようなレベルだが、それでもEsotericには小さくない影響を与えただろうと思っている。
今回、私が伝えたいのは、UX-1LTDとUX-3SEをベースとしてAIRBIWがさらなる改良を加え発売した「Supreme Emotion」シリーズのサウンドの素晴らしさである。この製品は、CDでさえほとんどのSACDの音質をも凌駕するほど素晴らしい音質が再現する。私自身が信じられないほどの驚き。究極のサウンド。そういう意味を込めてこれらのプレーヤーには、Supreme(至高の)Emotion(感動)という名前を付けている。X-01LTDやX-03SEをベースにしなかったのは、それらではDVDオーディオやDVDビデオが再生できないからだ。市販のDVDビデオプレーヤーの音質があまりにも悪いため仕方ないのだが、DVDオーディオはともかくDVDビデオの音はピュアオーディオには値しないと誤解されている方が多い。しかし、Supreme Emotionは、それが「明らかな間違い」であることを教えてくれる。DVDビデオに収録されたPCM音声は無論、ドルビー/デジタルの音質でさえSACDを凌駕することがある。これらのプレーヤーを使えば「楽しく聞けないディスクはない」と断言できる。音質のみならず画質に関しても、これらのプレーヤーの実力は、驚くべき物でDVDがまるでフィルムのように色鮮やかに透明感のある奥行きを伴って再現されるといっても決して言い過ぎだとは思えない。
技術的な解説は、これらのプレーヤーの良さを語るための本意ではないので割愛したいが、Supreme Emotionで私が意図したよりも遙かに素晴らしい音を実現できたのは「VRDS-NEO」というドライブメカの優秀さを切り離して考えることはできない。4億円とも5億円とも聞く莫大な投資を行ってEsotericが技術の粋を結集させて生み出したVRDS-NEOという“脅威の作品”がある限りこれからは、海外製の高級デジタルプレーヤーの購入を検討する必要はない。もちろん、VRDS-NEOの供給を望む海外オーディオメーカーはあるらしいが、残念ながら彼らの財布の紐は堅すぎてこのメカニズムを購入するには至らないと聞く。当然、VRDS-NEOの開発費を超えるほどの投資をドライブメカニズムの開発を行い、それを回収できるほど大規模なオーディオメーカーは海外にはない。
技術のみならずアートにおいても世界の最高峰に立つことができたということは、日本人として心から誇れることだと思う。愛国心さえ感じられるほどの出来映えである。だが、それらの音を聞けば、そんな精神論的な話は、きっとどうでも良くなるはずだ。音楽に秘められた熱いメッセージ、人が人を思う気持ち、すべてを支配してしまうほど激しい喜怒哀楽・・・。肌の色が変わっても、姿が違っても人の心には変わりはない、音楽に国境はないとそれらの音は、訴えてくる。「音楽に秘められた熱情」以前はそれを感じられなかったCDからでさえ「アナログを確実に越える音楽性を感じられた」のが何より素晴らしいことなのだ。それ以外のことはどうでも良い。ただ一つ、価格という壁を除いては・・・。
-
最新の投稿
-
女子部はみんなFF派!ファイナルファンタジーXIII