前回のメルマガを発信し、ブルーレイの画質の検証を実施せねばならないと考えていたところ、実に良いタイミングでVICTORからDLA-HD1とPanasonicのブルーレイプレーヤーの貸出機が届きました。早速、付属していた「パイレーツ オブ カリビアン」を試聴しました。
HDMI接続で観るブルーレイは、日本製の高級オーディオ製品と同じ印象です。音が良くても音楽が感じられないのと同じように、画質が良くなれば良くなるほど逆に「ソフトの粗」ばかり、目立つようなイメージです。
HDMIの最高画質だと、CGと実写の「境目」がハッキリと分かるようになります。さらに実写を加工している「特殊効果(映像調整)」が目立ってきます。曇っているシーンで、登場人物の顔のコントラストが強すぎたり、光源の位置関係に矛盾を感じたり、とにかく不自然さばかりが気になります。まあ「作りものの映画」と割り切って見ればよいのでしょうが、あまりに画像に矛盾が多すぎてしらけてしまい、ストーリーに入れないのです。私が趣味で写真や8mm映画を撮っていた経験があるだけに、余計に不自然さが気になるのです。それくらいならいっそのこと「アニメの方が良かった」という印象です。
接続をHDMIからコンポーネントにすると、画像の輪郭が柔らかくなり、動きも滑らかに感じられるようになることで、HDMIで感じられた「不自然さ」は、かなり緩和されます。違うタイトルのソフトですが、DVDを見るとブルーレイに比べ明らかに解像度などは劣化するのですが、バランスが良く自然で映画に入って行けました。
今回のテストは、限られた条件下での非常に簡易なものでしたが、それでもオーディオで音ばかりが良くなりすぎると違和感を感じるのとHDMI接続による試聴、ブルーレイの試聴で、映像が綺麗になりすぎるとソフトそのものに違和感を感じるのは同じ印象でした。特にブルーレイには、オーディオでCD/SACDを初期に比べた時ととまったく同じ感覚を覚えました。新しいフォーマットを十分に生かし切れるほど、ソフトの制作側のノウハウが熟成していないのでしょう。
「情報量」では遙かに優れるSACD/ブルーレイが「表現力」ではCD/DVDに劣る場合があること。音質同様にメーカーの「性能至上主義」が、新技術では、昔ほどその差が劇的ではなく、市場に通用しなくなっていることなど、音と映像の最先端技術に感じる問題点は、大きくオーバラップしているようです。同様に、メーカーの説明では、圧倒的に良いとされている「デジタル」による接続は「音」に対しても「映像」に対しても万能薬ではありません。それどころか、多くの場合アナログの方が音質画質が自然なことが多いほどなのです。
あえて付け加えるなら、音楽も映画もSACDだから、ブルーレイだからと言って、音や画質の良さに感動するのではありません。その「中身」に感動するのです。そして「中身の表現力」においてSACD/ブルーレイを評価するなら、CD/DVDと「大差がない」そう感じます。ソフトも新作ならできればブルーレイで買いたいと思いますが少なくとも、よほどお気に入りのソフトでない限り所有しているDVDソフトのブルーレイ盤を買うことはないでしょう。DVDでも特に困ることはないでしょう。そんな印象でした。
さらにブルーレイがSACDと異なるのは、AIRBOWで聞けばほぼあらゆる点でCDを凌駕しているSACDに比べ、ブルーレイは明らかにDVDに劣ると感じられる部分があることです。ブルーレイだけではなくハイビジョン全般に共通する問題点。それは「動画解像度の低下」です。
静止画では、水平1000本近い解像度が出るハイビジョンも動画になると極端に解像度が落ちる事があります。液晶プロジェクターやTVとの組合せでは、この欠点がより明確になります。画像が停止しているときにはハッキリしているのに、動き出すと途端にひどくボケるのです。私が酷評したSHARPの大型液晶TVでも今回テストしたVICTOR DLA-HD1でもこの問題はまったく解決されていません。測定したわけではありませんが、これらの機器でみる動画の水平解像度は500本を大きく切ると感じました。この現象は、不愉快でとても不自然です。悪いことにHDMI接続では、この傾向が余計に顕著になる傾向が強く(機器の相性によって異なりますが)「何でもかんでもHDMIが良い!」
的なメーカーの説明に強い抵抗を感じるのです。
動画の解像度が低いこれらの機器で映画を観ているときには、ハイビジョンよりも通常のDVDの画質が「より好ましい」と感じられることがあります。DVDなら静止画でも水平解像度が500本弱なので、動画との解像度の差が生じにくく、そのため画面が「自然」に感じられるからです。
大型の液晶TVの画質がプラズマやプロジェクターよりも芳しくないのは、画像のアップコンバート回路の画質がよくないからです。自宅のTVは売れ残ってしまったSANYOのLCD37HD6ですが、SHARPの2世代以上前のフルスペック液晶パネルを搭載しているにもかかわらず、SHARPの最新モデルよりも綺麗に感じます。それは、アップコンバートの回路の違いによるものだと思います。
特にフルスペックハイビジョンパネル(200万画素)を搭載したプロジェクターや液晶TVでは、この回路の画質が製品の画質を大きく左右します。そのため下手をすれば、フルスペックパネルよりも通常のハイビジョンパネルを搭載している製品の方が画像が美しく感じられることがあります(特にDVDやSDを見るときに顕著)。
やはり、音同様、画質についてもメーカーの説明を鵜呑みにしない方が良さそうです。性能を表す数字の大きさよりも「バランス」の方が遙かに大切だというのは、音も映像も同じなのです。DVDプレーヤーとディスプレイの接続もコンポーネントとHDMIのどちらがよいか?実際に試されることをお薦めします。
さて、発表では9~10月発売になっていたAIRBOW TRV-35SE/Dynamiteが予定より早く、あと10日以内で発売可能となりそうです。すでに特注パーツはすべて届き、製品と同一の評価モデルを作成し音質テストを行っていますが、問題はなさそうです。HPでの発表通り、従来の真空管アンプの概念をガラリと変えてしまう音質を持つアンプです。このアンプでお気に入りのソフト(特にROCK!)を大音量で再生しながら、一緒になって体を動かし、大声を上げれば、腹の立つことやうっそうとした気分なんて、あっという間に吹き飛んでリセットできます。来月には、1号館でもお聞きいただける予定です。
お盆明けには、貸出試聴機も準備いたします。音楽好きのお客様には、是非ご評価いただきたいアンプです。