今日は、朝からドイツのブルメスター/Brumesterの見学です。Brumesterの製品は、輸入代理店がCECの時にかなり積極的に扱っていたのですが、代理店が変わり価格が急上昇してからはほとんど扱っていませんでした。
現在生産販売されている世界最高級スポーツカー「ブガッティー」の純正カーオーディオとして採用されたことからも明らかなように、この約10年でBrumesterは、ヨーロッパで最高の高級オーディオブランドに成長していたのです。
これは出荷を待つ製品が置かれている倉庫の写真ですが、すべて100万円を大きく超えるものばかりで、ざっと見て売価で一億円近い製品が出荷待ちとなっていました。それでもマネージャーの話によると生産が間に合わないそうです。
彼らによるとこの価格の上昇は、妥協のない材料と最高の技術によりハンドメイドされることに加えて初期の生産品でも常に修理とアップグレードが可能で生涯にわたり使い続けることができることなど、ブランドとして守らなければならない高いハードルを越えた結果だと言うことです。
その言葉に偽りがない証拠に見学した本社では過去に生産されたすべての製品のデーター(現在のオーナー、現在のバージョンなど機器の内容に関するもの、測定データー)が保管されていました。彼らは、Bumesterを購入する顧客は「価格は全く考慮しない」と断言します。価格よりも品質を求める顧客がターゲットのようです。
ヨーロッパでは、本当のブランド品、高級品というのはそのようなものであり、それを許容できる少数の人たちのために存在するのでしょう。この写真は、入荷したパネルを検査する所です。指先と8倍のルーペで周到な検査を行う結果、入荷したパネルの3割近くが再加工もしくは破棄されると言うことでした。
左の写真は、入荷したスピーカーのユニットを選別検査しているところです(クリックするとビデオが見られます)。ユニットは低周波の信号で48時間以上エージングされ測定の後、コンピューターによって厳密にペアマッチされ製品に組み込まれます。
このような手の込んだ作業による品質管理により音質を向上させるのは、スイスの高級オーディオ・ブランドFM Acoustics(FMアコースティック)でよく知られていますが、Burmesterの徹底ぶりは、それを越えるほどです。ドイツ人らしい“品質へのこだわり(高いプライド)”を強く感じました。
日本では未紹介ですが、Burmesterはスピーカーも生産しています。プレーヤーからアンプ、そしてラックに至るまですべてBurmesterで統一するというのが彼らの考え方です。
ユニットは、ツィーターをエラックに委託生産し、ウーファーのメーカーは尋ねませんでしたがすべてオリジナルのユニットを使用していると言うことでした。ネットワークももちろんオリジナルで制作され、ケーブルも純銀を使ったオリジナルの製品が使われています。
彼らのスピーカーの最も大きな特徴は、ユニットを組み込む前に100時間近くエージングを行った後、精密に測定しペアリングを実施して製品に組み込まれることです。このようなペアリングは、超高級品にのみ許される行程で多大なコストがかかります。
スイス・FM Acoustics社が同じような精密なペアリングをアンプの製造時に行っていますが、その製品もBurmester社同様驚くほど高価です。写真は、本社倉庫で出荷を待つ大量のスピーカーです。製品総額は・・・。軽く億を超えるすごい額なのは間違いありません。
この部屋には、過去に生産された(プロトタイプも含む)すべてのBurmester製品が保管されています。中央のトーレンス・リファレンスは、ブルメスターさんが個人で使われていたものでもちろん非売品だそうです。
工場見学の最後にブルメスター社の試聴室で試聴会が開催されました。
最初に聞いたのは、リファレンスシリーズと呼ばれるB50スピーカー(現地価格の日本円換算で約300万円/ペア)を中心としたシステムですが、CDプレーヤーアンプを含めた総額では軽く1000万円を超えます。最初にPOPS系の音楽を聴いたのですが、価格の割にどうかな?という音でした。
その次に演奏された交響曲は、△。ちょっとがっかりしました。しばし、ブルメスター氏の説明を聞いた後、彼が好んで聞きまた自ら演奏もする(彼はギター奏者です)「エルビス・プレスリー」は、暖かみと厚み、細やかさがすべて高いレベルで融合した素晴らしい音でした。この音質なら、価格はともかく最高峰の音質だと言われても納得できます。
試聴会の締めくくりには総額で5000万円を超えようか!という超豪華なサラウンドシステム(ホームシアター)を聞かせてもらいました。視聴は、私も良くテストに使うdtsデモソフトが使われましたが、中域が充実し、実在感が非常に高くいつまでも聞いていたくなるような音質でした。このシステムの音質は私が作り出したAIRBOWのサラウンドを超える初めてのものでした。
ここまでの音を聞かされるとお客様の財布の紐は、ゆるまざるを得ないでしょう(そもそもこんなシステムを買うお客様の財布に紐があるのかどうかすら疑わしいのですが)。
明日は、イタリアに移動しヴィチェンツァの市内観光の予定です。