21世紀も1/10が過ぎて世の中はますますデジタル全盛で、オーディオもデジタルフォーマットがどんどん進化して「CD 44.1kHz/16bit」はもうまるで役立たずのような扱いです。確かに映像はハイビジョンの普及で従来とは比べものにならないくらい「画像が細かく」なりました。では、ハイビジョンで映画を見ると従来よりも感動が深いでしょうか?オーディオはどうでしょうか? オーディオの面白いところは、音楽的感動や音質が「音質(デジタルフォーマットの品質)」とは必ずしも一致しないところにあります。スペックが音質や感動とイコールなら、なぜ真空管アンプは生き残っていません。
本日のメルマガは、次号オーディオ・アクセサリー誌に掲載する逸品館広告文章のコピーを掲載することでその疑問の一部にお答えしたいと思います。
いい音は電源から(2)
「ビットパーフェクト」と言葉をご存じですか?PC/ネットワーク・オーディオ でディスクに記録された(もしくはデーターとして記録された)デジタル信号を 100%損なわずにデジタル/アナログ復調回路に送るという意味に使われています。語彙としては正しいですが、「ビットパーフェクト=高音質(原音に最も近い)」という考え方は間違っています。
私たちが聞いている「音」の正体は、「空気の粗密波(連続した空気の密度の変化)」です。マイクは粗密を電圧に置き換え、デジタル方式では変換された電圧の変化を量子化という方法で「圧縮」し「0または1(ビット)」という単純なデーターとして記録します。音楽を聞くときには、記録され たビットを再び「連続した空気密度の違い=音」に変換するのです。
要約すると、録音~再生技術の中でデジタル技術が使われるのは「情報保管と伝達」 に限られることがわかります。また、連続的な変化をそのまま記録するアナログに比べて、デジタルはアナログ信号を「点に変換(圧縮)」しますので、デジタル化により確実に「音質は損なわれる」のです。つまり、デジタルとは最初から高音質が目的ではなく、「記録~伝達時に音 を悪くしない方法」として生み出された技術なのです。しかし現実では、低価格のデジタル機器の音質(iPodなど)は、従来のアナログ機器(ウォークマンなど)を上回ります。その理由は「デジタル回路とアナログ 回路の違い」にあるのです。
先に説明しましたように、デジタル回路は「音を悪くしない(情報を劣化させない)」ために生まれた技術です。また高度な処理装置がICとして非常に安く普及しているデジタルでは(iPhoneの能力は初期の数百万円のPCを大きく上回ります)、低コストでもほとんど音質を劣化させない情報伝達システムを作れます。これに対しアナログ回路で「音質を劣化させない情報伝達システム」を作ろうとすれば、莫大なコストがかかります。ウォークマンの情報伝達システムはアナログなので、低価格の製品ではデジタルよりも音質の劣化が激しく、その差が再生音の違いとして現れるのです。このように低価格の機器ではデジタル機器の音質が有利です。
しかし、アナログ回路が高性能になると音質はデジアナ逆転現象を起こします。なぜならば、アナログ回路はコストの影響をまともに受ける(高性能高価格になると音が良くなる)からです。音源(プレーヤー)が同じでも、接続するアンプやスピ ーカーの価格で得られる音質が極端に変わるのはオーディオの基本ですが、それ はアナログ部の音質がコストの影響をまともに受ける証明です。デジタル機器と呼ばれているCDプレーヤーやDACも内部は、デジタル回路とアナログ回路が混在しています。デジタル回路は低コスト品と高コスト品で音質がそれほど変わりませんから、アナログオーディオセットと同じようにデジタル・オーディオ機器の音質もデジタル部分よりもアナログ部分が決め手となるのです。
デジタル高性能・アナログ低性能の”32bit処理/低価格DAC”とデジタル低性能・アナログ高性能の”24bit処理/高級DAC”の聞き比べでは、ほぼ例外なく24bit処理の高級DAC(高級アナログ回路を搭載する製品)が低価格品を上回ります。またデジタル処理がわずか16bitの10年以上前のDACでも、最新の低価格32bit 処理DACの音質を軽く上回ることは珍しくありません。デジタル・オーディオ機 器の音質を決めるのは、搭載されているアナログ回路の音質です。ハイビット・ ハイサンプリングのデーターを再生しても、PC/ネットワーク・オーディオ機器 の音質が高級CDプレーヤーを上回れないのは、アナログ回路の音質の違いによる ものです。それは廉価なプレーヤーでSACDを再生しても、高級CDプレーヤーの音質に敵わないのと同じです。
「ビットパーフェクト」という言葉に代表されるデジタルデーターの品質が音質に与える影響は、数字から想像されるよ うにも遙かに小さく、ほんのわずかなものでしかありません。 前回の広告で「良い音は電源から」というお話をしましたが、それはピュアオー ディオ機器のみならず、PC/ネットワーク・オーディオ機器にも広く当てはまり ます。オーディオの音質改善が「上流」つまり電源が基本であるようにPC/ネッ トワーク・オーディオ機器も電源で音質が大きく変わります。
いい音は、上流から。いい音は電源から。CSEやAIRBOWのアイソレーショントラ ンス、AIRBOWやAETの電源ケーブルやタップなど様々な電源関係アクセサリーを お試し下さい。確実に音が良くなります。また、機器を買い換えることがあって も電源関連のアクセサリーはそのまま使えます。良い電源は決して無駄になりま せん。中途半端な製品を買い換え続けるよりも、最初に納得できる良い製品を購入する ことが無駄なコストを抑える秘訣です。