逸品館メルマガ245「オーディオの近未来を考える」

連休を控えて(突入しましたが)遠方からのお客様のご期待を裏切らないように、3号館のメイン試聴室の再調整を行いました。大きすぎてあまり試聴のお声がかからないTannoy Kingdom Royalを出して、TAD E-1を1号館より移動しました。これで、TAD E-1、B&W 802Diamond、そしてMagico Q-1と話題のスピーカーを一同に揃えられました。もちろん3号館の看板であるPMC BB5はそのまま設置しています。
大幅なセッティング変更のために休日出勤して、すべてのスピーカーが「最高の音」でなるようにセッティングの再調整を行った結果!どのスピーカーも、今までを超えるものすごい音で鳴りだしました!是非3号館のベストサウンドを聞きにいらして下さい。想像を遙かに超えるその音に驚かれ、ハイエンド・オーディオの魅力をご納得いただけると思います。

今年初めから開発を続けてきたAIRBOW TL3Nもやっと完成しました!CECの新型ベルトドライブ・メカニズムを究極にまで高め、さらにスタビライザーを新開発し本体を支える脚もSwitch-Legを奢るなど、隙のない高音質化を行なった結果、内外の100万円を大きく超えるCDトランスポーターを凌駕するほどの音質に仕上げることができました。きめ細かく滑らかで、暖かく広がりのあるその音はまるで「レコードを聴いているよう」な雰囲気です。従来モデルと比べるとややあやふやだった高音のエッジがしっかりと立ち、低音も引き締まっています。CD-R/RWの読み取りのも対応し、操作の速度が通常のCDプレーヤー(最近の製品は遅くなっているのでそれよりもずっと快適)と同等に早くなっているのも素晴らしいことです。完成度の高さと、滑らかな音から自信を持って「Analogue」と名づけました。
http://www.ippinkan.co.jp/airbow/product/cd_transporter/tl_3n.html

TL3N Analogueのために開発したスタビライザー「STB-1」も私の想像を超える仕上がりです。スタビライザーを交換するだけで、プレーヤーそのものを交換したのでは?と勘違いしてしまうほど音が良くなります。解像度が増加し、低音がしっかりとして高音は伸びやかに美しく響きます。付属してオレンジの制振リングを取り付けると響きが制御され、通常のベルトドライブCDトランスポーターのような曖昧さのないHiFiサウンドに変わります。見た目の美しさも抜群で、STB-1を手にとってCDをセットすることが楽しくなると思います。滑りやすい純正のスタビライザーと違って、STB-1は手にしっかりと馴染みますので、滑って落とすこともありません。
http://www.ippinkan.co.jp/airbow/product/accessory/stb.html
トランスポーターの完成に合わせて、DACの開発も行っています。Esotericから発売されたD07XをベースとするAIRBOW D07X UltimateのD07を超える音質アップの決め手となったのは、USBドライバーの高速化だと思います。従来モデルのD07ではUSB接続は96kHz/24bitまで、すなわちUSB1.0の規格(12Mbps)でした。これがD07Xで192kHz/24bitとなり規格がUSB2.0(480Mbps)に進化しました。
一般的にはインタフェイスが40倍も高速になったことで「データーのやりとりに余裕が生まれ音が良くなった」と説明されていますが、これはどう考えても間違っています。私はUSB通信に使われるベースクロックの周波数が高くなったため「ベースクロックの干渉によって発生するノイズが可聴帯域外に追いやられた」結果、可聴帯域の音質の濁りが消えたと考えています。
 
正否はともかく、USB2.0の採用でD07X Ultimateは、高域の透明感や解像度感が大幅に改善し、PCオーディオ特有の高域の曇った感じ(見通しの悪い感じ)や高域の硬さがさらに緩和されています(完全に消えたわけではありません)。また、この改良により搭載される32bitDACの「きめ細やかさ」がグッと引き出されCDを超えるほど細かい音まで聞き取れるようになりました。広がりと空気感の改善には、めざましいものがあります。以前にテストしたUSBメモリ2.0と3.0の比較でも明かですが、通信に使われるベースクロックの高周波化、ローノイズ化はPCオーディオの音質改善の決め手のように思います。OSをリナックスに変えたり、PCを弄っても音は良くなりますが、それもPCのローノイズ化が実現するからだと考えています。
http://www.ippinkan.co.jp/airbow/product/cd_transporter/d-07x.html

最終的には、PCの通信やネットワークのノイズの影響を受けないDACが実現すれば、PCや接続ケーブルで音質が左右されない(つまり素晴らしく音が良い)音楽再生が実現すると思いますが、まだまだそこに至る道は長いように思います。なぜなら、PCはオーディオのために進化するのではないからです。とはいえ、USBインターフェイスの高速化で音質がこれほど大きく改善すると言うことは、PCオーディオの未来も明るいと言うことでしょう。

D07X Ultimateに至るPC/ネットワークオーディオ対応のAIRBOW機器の開発や、市販品のテスト経験からPCの音を良くするためには、まず「通信(有線/無線LANブルートゥース)」を無効にすることが有効だとわかっています。そしてPCとDACの接続には、質の良いデジタル接続ケーブルを使うことです(光接続も効果があります)。CDは読み取りエラーを起こして音が悪く、PCはエラーしないから音が良いという迷信は、綺麗に忘れて下さい。音質改善の鍵は「データーの高品質化」にあるのではなく「ノイズの低減」にあるのです。これは、消去法で考えた結果なので、かなりの高い確率で間違いないと考えています。

これらの考えを総合的に実演したのが、先週に行った「EARフラッグシップモデルの試聴会」です。結論から述べると、最終的にスピーカーへ入力されるのは「滑らかな波(アナログ波形)」です。デジタルとは、この波形を点に分解したデーターです。デジタルを再びアナログに戻すためには、点と点を「滑らかに繋ぐ」作業が必要です。この作業をもっとも「エレガント(それらしく)」行うのが高度にチューニングされたアナログ回路です。特に真空管アンプは、その響きにより失われた「波の揺らぎ」を見事に復元します。ハイビットハイサンプリングという技法を使っても、所詮デジタルは「点」でしかありません。どれほど点が細かくても(ハイレゾ)点と点の結び方が悪ければ(アナログ回路がプアであれば)元の滑らかな波には戻りません(良い音になりません)。これが、アナログとデジタルの関係を要約したものです。
EAR試聴会の録画はこちらからご覧いただけます。
https://www.ippinkan.com/event_news/3goukan/2012-04-21/2012-04-21.htm

演奏の完全な復元は不可能です。しかし、演奏の雰囲気を生以上に生々しく再現することは可能です。それがオーディオ(映画もそうです)の神髄です。オーディオの音質を向上させるのは、写真ではなく絵画の技法です。原音にこだわっている間は、生演奏を超えることはできません。原音忠実が生演奏を超えられないのであれば、必ずしも良い音(良い映像)を出すために複雑な機械、高価な機械は必要ないのかも知れません。大切なのは「良い音(映像)」を出したいというあなたの情熱と工夫です。良く調整された機器は、調整不良の高価な機器よりもずっと高い能力を発揮します。

あなたがお聞きになる、ご覧になる音楽や映画が「良いか悪いか?」を決めるのはあなた自身です。1億人の人生がそれぞれ違っていて、幸せか不幸せかを決められるのは「自分自身」でしかない。良い音と良い映像を決めるのもそれと同じだと思います。オーディオ機器の良さを見いだし、その価値を決めるのはあなた自身です。間違ってもつまらない雑誌のランキングやWebの噂ではありません。もし、音と映像のことで迷ったりわからなくなったら、逸品館をお尋ね下さい。良い解決のヒントが何か見つかるかも知れません。連休は!じっくりとお使いの機器を練り直す良いチャンスです。

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