———————オーディオの発達と音楽の関わり———————
・高音発生原理の違い
また、楽器とスピーカーが発生する「高音」にも大きな違いがあります。ツィーターのような薄い膜を持たないバイオリンやシンバルは、固体の表面が波打つことで高音を発生しています。固体表面が高速で波打つと、固体に接触している空気は急速に圧縮され、場合によっては音速を超える音波(衝撃波)が発生します。音波が音速を超えると、レーザー光のように距離に応じて減衰しにくくなります。しかし、スピーカーに使われている薄い膜を往復運動させて高音を発生させるツ
ィーターでは、これほど急激な空気の圧縮が行われないため、距離が離れると高音は減衰します。楽器の高音が遠くまで良く通るのは、高音の性質が違うからです。
楽器の強い圧力を持つ高音とスピーカーの圧力の弱い高音は、質感が違って聞こえます。逸品館は楽器と同じ原理で圧力の高い高音を発生する装置を作り、波動ツィーター「CLT-3FV」という名称で製品化していますが。このツィーターを使うと楽器の音が、非常に生々しくなる(実在感が出る)ことからもこの考えが間違っていないことが証明されます。
・マイクロフォンの音色
オーディオマニアは、録音が完全であると考えています。しかし、それも間違いです。スピーカーに数多くの種類があるようにマイクロフォンにも多くの種類があり、方式や価格によってその「マイクロフォンの音色(録音されたときの楽器の音色)」は明らかに異なります。つまり、録音された段階ですでに、楽器の音色に色が付いてしまうのです。
また、マイクロフォンが捉えた面積の空気の振動(音)の「位相情報(音源とマイクの振動板までの距離関係)」を正確に再現するには、同じ面積の振動板から音を発生させなければなりませんが、スピーカーの面積はそれよりも遙かに大きく、マイクが捉えた位相情報を正確に再現できません。これ以外にも様々な要因があり、現在のマイクロフォンでは音声の完全な記録は不可能です。
「原音忠実再生」は、現在のオーディオ・テクノロジーでは不可能です。時々PCオーディオの世界では「ビットパーフェクト」と呼ばれる、デジタル領域での信号の完全性が求めるようですが、録音・再生のあらゆる部分ですでに破綻している完全性をデジタルデーターの領域だけで保ったとしても再生音声の品質が劇的に向上(改善)することはありえません。
次号に続く————————————————————————