JBL 4344MK2

JBL 4344MK2

「JBL」、誰もが知るスピーカーであり、誰もが一度はあこがれるブランドです。いうまでもない、「ビッグネーム」。名器「ハーツフィールド」の血筋を引くのが「K2-S9500/S7500」。スタジオモニター「4320」シリーズの流れを引く、最新モデルが「4344MK2」。
スピーカーの名門は、「現在も名門として通用する音質」を持っているか?名器の系譜は、最新版でも「名器」として通用するのか?厳しく、テスト・検証してみましょう。

テクニカルデータ及び特徴

  • 入力インピーダンス 6Ω
  • 出力音圧レベル 95dB(2.83V/1m)
  • 周波数特性 30-22KHz(-6dB)
  • クロスオーバー周波数 340Hz/1.3KHz/8KHz
  • サイズ・重量 635(W)×1051(H)×435(D)㎜ ・ 81.9㎏
  • ★アクアプラス・コーティングを施したファイバーコンポジット・コーンとSFG磁気回路搭載の38㎝ウーファー
  • ★中低域は25㎝ミッドバス・ユニット2123H
  • ★中高域は、ネオジウムマグネットを採用した1インチスロートのコンプレッションドライバー(ホーン型)275Ndを搭載

第一印象

  • 音が出ない!
  • まったく細かな音が出ない上に、音の立ち上がりが悪く、ユニットに音がへばりついて離れない。
  • 電気楽器系のプログラムを、音を大きくして音圧だけで聴くのなら良いかも知れないが、クラシックなどの繊細な音楽にはまったく不向きのようだ。
    ただし、低域ののびは結構ある。周波数特性の定位限界30Hzは掛け値ない数字だろう。
  • でも、私が聴きたいのは「音楽・ハーモニーの融合」であって「大きな音・てんでバラバラの音」ではない。
  • このままでは、「推薦できるスピーカー」とは言い難い。

上手な、鳴らし込みにチャレンジ!

JBLのモニターは、伝統的に接点が弱いことは「JBL使い」なら誰もが知っていることです。もう一つ、案外知られていないかも知れませんが「アッテネーター」は大いに活用すべきです。それから、今までのJBLは「きちんと調整すると左右のアッテネーターのボリュームの位置がかなりずれてしまう」のが当たり前ですから、基本的にボリュームの位置関係は無視して「楽器を調律する」ように耳だけで追い込んで行かなければなりません。
では、まず最初に「接点」を磨いてやりましょう。接点を磨くためには、まず「ユニット」を外さなければなりませんが、その順序と方法を画像入りでご説明いたします。作業する4344MK2は、新品ですから「接点を洗浄する必要」は特にありません。しかし、組付けは工場でラフに行われているのがJBLのアメリカっぽいところです。接点に「熱研/カーボン・ダイヤトニック」を湿布し、「強力にきちんと組み付け直す」だけで、「音質を驚くほど向上させる」ことができるのです。

ただし、この説明の内容についてのお問い合わせには一切お答えしませんし、作業中の事故や、結果については「お客様自身」が責任を持って下さい。当社は、一切関知いたしませんので、あくまでも「個人の責任の範囲」で行っていただくように御願い申しあげます。
また、ユニットからケーブルを外し再組み付けする場合には、「絶対にプラス・マイナスを逆にしないよう」十分注意して下さい。

まず最初に、ウーファーを外します。(出来ればスピーカーをユニットが天井を向くように寝かせておくと良いでしょう。)

  • ウーファーを固定しているねじをゆるめて取り去ったら、ウーファー背面のコネクターに接続されているコードを外します。
  • 再度組み付けるときには、コードの先端と、ウーファーの端子に「カーボン・ダイヤトニック」を湿布し、確実に強く接続します。
  • ミッドバスも同じ方法で取り外し、ユニットとケーブルの接続部を外して、「カーボン・ダイヤトニック」を湿布した後、強くコンタクトを取れるように接続し直します。
  • 高域ユニットの接点は、次のような方法で「磨き」ます。


ウーファーを外したら、高域用ネットワーク(画面左)・低域用ネットワーク(左から2番目)が見えます。

高域用ネットワークから、ツィーターへの接続ケーブルにコネクターが付いています(右から2番目)から、コネクターを外して(画面右)端子に「カーボン・ダイヤトニック」を湿布し、数回抜き差しして、コンタクトを確実にした後、接続します。

次に、コンプレッション・ドライバーと、スーパーツィーターの給電端子への「カーボン・ダイヤトニック」の湿布ですがこれはちょっと高度なテクニックを必要とします。

まず最初に、4344MK2背面のサービスパネルを開けなければなりません。


初めに、スピーカー背面のサービスパネルのねじ10本を全部外します。

次に、ウーファーを外した穴から、「先の柔らかいハンマーのようなもの」を差し入れて、パネルを内側から「軽く叩いて」緩めます。このとき注意しなければいけないのは、パネルの内側が「吸音材」で覆われているので、「吸音材」に出来るだけ傷を付けないようにすることです。

パネルが、外側から見て「外せるくらい緩んだ」らパネルを取り去ります。


そこには、コンプレッションドライバーとスーパーツィーターの、ケーブル接続部が見えるはずですから、外して、「カーボン・ダイヤトニック」を湿布後、再度きちんと接続します。そして、サービスパネルを元通りに組み付けます。
最後に、一番大切な心臓部「アッテネーター」を洗浄します。

ウーファーを外した開口部から中を覗けば、このようなボリュームが見えます。このボリューム背面の「魚の鰓のような隙間」から「ケイグ(スプレータイプを使えばやり易い)」を注入してボリュームを洗浄します。
「ケイグ」とは「東志」が輸入代理店となっている「アメリカ製の強力接点洗浄・復活剤」です。JBLの修理などに純正で使用されているのは、この製品です。これ以外の接点復活剤は「音を変えてしまう」ので絶対に使用しないで下さい!
ボリュームの洗浄が終わったら、ウーファーを組み付けて作業は終了です。
作業の終了後は、「驚くほど音がスムーズになり、細かなニュアンスが再現される」ことにお気づきになるでしょう。

この方法は、4344MK2だけではなく、「ほとんどすべてのJBLモニター系スピーカー」に有効な音質向上テクニックです。
また、JBLのモニタースピーカーは定期的に接点やボリュームのメンテナンスを行わなければ音質は著しく劣化します。中古のJBL製品を購入する場合には、「きちんとメインテナンスされているか」、そして、ウーファーやミッドバス等に使用されている「ウレタンエッジ」か「へたっていないか」を自分できちんと確認するか、あるいは「販売店」におたずねになられることをお薦めします。
最近、良くおこなわれる「エッジをセーム皮に張り替える」という補修法は、「張り替え後、ユニットのダンピングファクターが変わる」のは確実ですから、「音質は必ず変わる」でしょう。「エッジをセーム皮に張り替えられたスピーカー」は、「JBLの音は保証できない」とお考えになるのが無難だと思います。

誰にでも出来る、もっと簡単な調整法・接続編

4344MK2のネットワークコンデンサーは「バイアス電圧」がかけられています。スピーカーターミナル(画像)の上部の二本のねじを外せば、9Vの電池が入っていますが、この端子にも「カーボン・ダイヤトニック」を湿布しましょう。
スピーカーケーブルを[Bi-Wire]で接続しない場合は、最初に付いている「金色のショート板」に換えて、画像(黒と白の線)のように、6Nなどの高音質スピーカーケーブルを切って、「高音質ショート線」作って使うだけでも音質はハッキリと向上します。もちろん、スピーカーケーブルや端子にも必ず「カーボン・ダイヤトニック」を湿布して下さい。
特に、高純度の銅線は「酸化すると音が悪くなる」ので、被覆を剥いで「露出した銅線部」に「カーボン・ダイヤトニック」を含浸させておけば、「かなり長期間酸化を防止」出来るでしょう。
アンプからの配線は、「必ず高域にプラス」・「低域にマイナス」を接続して下さい。(斜め/スタッガー接続になります)。これだけでも音はずいぶん違うのです。画像では、オルトフォンの7Nバナナプラグを使用していますが、「いかなる場合にもバナナプラグは使わない」ほうが音質的には有利であることを付け加えておきます。むき出しの銅線を直接(カーボン・ダイヤトニックは湿布して)繋ぐのに優る、高音質の方法はないのですから。
バイワイヤリング接続におけるスタッガー方式(ただしスピーカーによってプラスマイナスは入れ替わります)、バナナプラグは使わないこと。これはその他のほとんどのスピーカーにも当てはまる高音質化へのテクニックです。

誰にでも出来る、もっと簡単な調整法・レベル調整編

4344MK2には、ディフューザー(音響レンズ)が付属しています。各ユニットの音量調節用ボリュームもあります。これらの使いこなしについて検証しましょう。
まず、ディフューザーですが、「音像を散漫にし、定位を乱す」ので、意外に思われるかも知れませんが外した方が、音の広がり感が増すはずです。
また、ホーンという方式の特徴として、正面(センター軸上)で聴く場合とオフセンターで聴く場合の周波数特性が大きく違ってしまいますから、リスニングポイントからスピーカーを見たとき「ホーンの奥が見える(画像右)」ように中央よりに角度を付けて設置することをお薦めします。

このようにディフューザーを外しセンター向きに設置すると「音がきつく=子音が強調」されてうるさく感じますから、スーパーツィーターの周囲にフェルトを施し、各ユニットのレベルを再調整しましょう。


左の画像は、フェルトを切り抜いてスーパーツィターに被せた状態です。(被せているだけなのですぐ外せます)
右の画像は、調整後の左右スピーカーのアッテネーター・ボリュームの位置です。
「0」よりもかなり絞れた位置になりますが、「この位置が最も正しく楽器の音を再現できる」位置であることを保証します。最初は音が曇って聞こえるかも知れませんが、よくお聞きいただければ「音楽のニュアンスが最も多彩に再現される」ことにお気づき頂けると思います。
また、左右のボリュームの位置は「ほとんど等しく」なっていますが、これはそれぞれのスピーカーに対して調整をおこなった結果が「たまたまそうなった」だけですから、スピーカーの個体差により「ボリュームが左右均等でない」場合も十分考えられます。
私の知る限りでは、「ユニットの音圧レベルが左右が均等であった、唯一初めてのJBLスピーカー」がこの4344MK2でした。ということは、つまり今までの「JBLモニターのユニットの音圧」は、左右がそろっていないのが普通だったのです。特に「並行輸入されたJBLスピーカーの不均一さ」はひどいものだった経験があります。これらは、「数多くの中古品を責任を持って扱った」経験から得られたものです。

結論

4344MK2が「信頼できる製品」であるかどうか?それは「あなた自身が聴いてみてから」答えを出して下さい。 すでに、「4344MK2」を所有しているお客様は、「この調整をおこなってみられる」ことをお薦めいたします。

逸品館の特色

逸品館は「数多くの中古品」を扱っていますが、「過去の製品の音質から学べる」こと、そして「実際に長時間使い込まれた製品」から得られることは、とても「大切な情報」であり、「重要なノウハウ」となります。
製品が「長時間の使用」に耐えうるかどうか?「劣化している場合」、どうすれば「効率的に修復」出来るか?それは、「実際に数多くの製品に触れない」と決して学ぶことが出来ません。
そして、「そこから学んだノウハウ」は、惜しみなくお客様に「フィードバック=還元」させて頂けるのです。「Sound Visual Commnuication」の文字で「逸品館」が囲われているのは、そういう意思の表れです。「Communication」こそ「大切な商売の原点」であると、我々は感じています。
そして、そのコミニュケーションに「正確さ」と「ハート」があれば、最高の仕事が出来るでしょう。
逸品館に常設されている「試聴機」は、「すべてメーカーから買い取った製品」です。それは「自分で買ってみないとわからないこと」を学ぶためです。このページに「記載された使いこなしのテクニック」などは「メーカーから借りている試聴機」では、決して試せないことなのです。
「お客様から教えて頂ける」ことも、もちろん沢山あります。しかし、「お客様がお求めになる」ことに対して「納得できるお答え」をご用意すること、お客様の「信頼」に100%答えようとする、前向きな姿勢をなくせば、もはや「専門店」ではあり得ない。
逸品館社員一同、日々その気持ちを新たにサービスの向上に努めるつもりでございます。いたらない点も、多くあると思いますがご指導のほどよろしく御願い申しあげます。

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