今秋、ブルーレイ、HD-DVDの登場と同時に[HDMI Ver1.3]を搭載しないAV機器がまるで価値がないかのように扱われています。大手量販店では、ほぼ間違いなく「HDMI Ver1.3対応かどうか?」が「売り」の一番のポイントにされるはずです。しかし、本当の意味で画質、音質を重視されるなら「HDMIには、手を出さない」方が賢明です。その理由は簡単です。[HDMI Ver1.3]は、一本のケーブルで簡単に機器を接続する目的で作られた規格で、実際は画質、音質が優れていないからです。
実際にHDMIによるデジタル接続とコンポーネント(D端子)によるアナログ接続の画質を比較されたことはありますか?我々も全ての機器を比較したわけではありませんが、過半数を超えて大多数の機器でコンポーネント(D端子)による接続の方が、自然で奥行き感のある画質が得られるという結果が出ています。更に音質に関しては、まだ検証できる機器が少ないため明らかではありませんが、非圧縮の[ドルビー True HD]をHDMI経由でAVアンプに繋いだときの音質が、従来の圧縮された[ドルビー デジタル]にさえ及ばないことがあるという衝撃的な結果が出ています。デジタルとアナログという伝送方式の違いやフォーマット(情報量)の差を考えると、全く信じがたいことですが事実です。
そのことは少し見方を変えると分かります。まず数十mという単位の長さでは、現在の高級コンポーネントケーブルを使った場合「アナログ信号はほとんど減衰しない」のです。それに対し、コネクターの形状から無理があるHDMIでは、数十mと言う短距離でも「信号のやり取りが不可能になるくらい激しく信号が劣化する」のです。このケーブルでのロスに対し「デジタル/アナログ変換」、「アナログ/デジタル変換」によるロスは、近年の処理ICの飛躍的な進歩により「無視できるほど小さく」なっているのです。つまり、映像信号を伝送するために信号を「デジタルに変換」する方が「信号伝達時のロスが過大」となるため、画質が優れないという逆転現象が起きていると考えられるのです。
音質に関してもオーディオの世界では、ちょうどドルビー デジタルとドルビー True HDの差に相当する、CDとSACD(DVDオーディオ)の勝負が決しています。現在の最高級デジタルプレーヤーには、CDしか再生できない機種が多いのです。つまり、SACD(DVDオーディオ)は、圧倒的な有利にもかかわらず高級オーディオの世界では普及しなかったのです。その一番の原因は、「ソフトの不足」にあることは間違いありませんが、実際に両者の「音質の差が意外に小さかった」、あるいは「機器によって両者の差が逆転した」という理由も大きかったはずです。つまり、すでに現在用いられているデジタル音声のフォーマットで「十分な音質」が得られたため、メーカーが幾ら煽ってもユーザーはそれを迎合しなかったのです。音質だけがすべての「オーディオの世界」でもそうなのですから、それよりも遙かに稚拙な音しか出せないAVアンプの世界では、音質の勝負は火を見るより明らかなはずです。
とどのつまり、HDMI接続で便利なのは、「一本の線で繋げること」、「一つのリモコンで複数の機器が操作できること」など、家電製品としての目的に限られるのです。これらの話を総合して考えても、あなたはまだ[HDMI Ver1.3]に固執されるでしょうか?
最後に一つ付け加えておきたいことがあります。それは、プロジェクターを設置する場合の「壁内配線には、かならずコンポーネントケーブルを埋設しなさい」と言うことです。ここ数年のHDMI規格の激しい移り変わりを見てもわかるように「最新の規格は、変わりやすく将来的に使える保証がない」からです。たった3年で壁に埋め込んだ線を「時代遅れで使えません」と言われたら、あなたは一体どう感じられるのでしょう?そして、その責任は、お客様には一切無いのですから!
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