逸品館メルマガ064「2007年を振り返って(1)」

AV関連の今年の大きな出来事は、ホームシアター機器にHDMI Ver1.3が本格的に導入されたことです。しかし、前宣伝では、あれほど素晴らしい!(今でもそう宣伝されていますが)と思われていたHDMI Ver1.3が期待通りの音質・画質で無かったことは残念でした。


画像は、従来を上回る場合もあるので今後に期待するとしても、ブルーレイのドルビーTrue HDの音質は、従来のドルビーデジタルより少しは「まし」なのですが、同等のデーター量を持つsacd/dvd-audioとは比べものにならず、その圧倒的なデーター量が音質に反映されているとは到底言えない状態です。この結果には、ピュアオーディオのCDやAIRBOWのDVDプレーヤー、AVアンプの音質を知る我々は、首をひねっています。しかし、残念ながらこの程度の「もの」をあんなに大宣伝して世に出すメーカーを信頼することはできません。DVDオーディオの発売時にメーカーがあれほど大々的な宣伝を行ったにもかかわらず、今の結果を見ればドルビー True HDの未来も怪しいものです。

しかし、それでも高級機は、どんどんブルーレイを搭載し、悪いことに従来のようなDVDプレーヤーの高級機は今後作られない可能性が高くなってきました。AIRBOWがベースとしているMarantz製品も、現行モデルの最高機種の定価は9万円とAIRBOWの最高機種のベースモデルDV12S2の28万円と比べると1/3になってしまっています。確かに低価格製品をベースにして高級機に負けない性能の機器を廉価で実現するのがAIRBOWのお家芸とはいえ、この状況は決して喜ばしいものではありません。

悪いことはDVDプレーヤーだけではありません。AVアンプも最新モデルは、例外なくHDMI Ver1.3が搭載されつつあります。しかし、このHDMIはVer1.3になってそれ以前のHDMIと比べてデーター量が増え、搭載する素子のノイズの発生量が非常に大きくなっていることをご存じですか?

例えば、高級(高音質)CDやDVDプレーヤーには、ノイズの源となる理由で「電光表示(FL)」をOFFにするスイッチが付いている(MarantzのAVアンプにも付いています)ます。しかし、それよりも遙かに大きなノイズをまき散らしているHDMIをOFFにできなかったら、どうなるか?答えは明らかです。ノイズを明かりにたとえるなら、HDMIはまるでサーチライトです。それに比べると電光表示の発生するノイズは、豆電球ほどでしかありません。サーチライトの横の豆電球を消して、何が変わるのでしょう?高音質を狙うなら、AVアンプにHDMI端子、それも特にVer1.3は搭載すべきではありません。HDMIの搭載により、それがないアンプよりも音が悪くなるからです。

しかし、時代の流れには逆らえず、AIRBOWも来年中盤以降には、SR7002をベースとしたAVアンプを発売することになるでしょう。HDIMの搭載に意味がなかったとしても、それを搭載していないと「売れにくくなる」という現実があるからです。しかし、逆にそれによって従来モデルが見直される可能性もあります。なぜなら、今AIRBOWがベースとしているAVアンプには、すべてノイズ源となるHDMIが搭載されていないため、新型よりも音質に優れる可能性があるからです。現在、発売しているAIRBOWのAVアンプは、すでにこれ以上の音質が望めない(これ以上の音質は、一般家庭には不要と感じられる)ところまで完璧に仕上がっています。よほどの理由がない限り、売り切れるまでモデルを変えることは考えていません。特に渾身の作である、PS8500/Specialは、それ以上できないくらい完成度が高く、絶対にモデルチェンジすることはありません。是非一度はお聞きいただきたい製品です。貸出もしくは逸品館の店頭でお試しいただけます。ブルーレイにあわてて手を出す前に、既存製品が新製品を圧倒的に凌駕する音質に達していることを知っておいていただきたいと思います。

HDMIを搭載していないから、負け惜しみを言っているのだろう!?とんでもありません。HDMIが搭載されなくても、不都合は何もありません。特に画質音質を優先なさるなら、HDMIや自動音場調整機能は、なくても十分なはずです。とはいえ、それでも販売の人気はHDMI搭載モデルに移って行くでしょう。なんだか無限に循環するお話のようになってしまいましたが、メーカーがその姿勢を変えない限り今後もこのような矛盾が発生することは、避けられないしょう。

話は変わりますが、最近音楽DVDビデオソフトが増えています。価格は安いものなら千円台で十分入手可能となっています。この音楽DVDソフトは、映像が入っているという良さだけではなく、120分を超える長時間収録が可能なため長時間のコンサートでも一枚のディスクに収録できるという大きなメリットがあり、CD/SACDソフトのように曲の途中でディスクを換える必要がありません。このようにメリットの多いDVD音楽ソフトですが、一般に販売されているDVDプレーヤーの音質は、ピュアオーディオ製品と比較できるほどではなく、それらの製品で音楽DVDソフトを再生しても、音楽を十分に楽しめません。このため、今でもDVDビデオの音質は、CD/SACDに大きく劣ると誤解されています。

そこで、このような音楽DVDソフトをCD/SACDと同等以上の音質で再現すべく、DV9500/Special/Mark2を音楽再生に的を絞ってリメイク、半数以上のパーツを変更しMark3へと進化させました。http://www.ippinkan.co.jp/airbow/product/cd_dvd/dv9500.html

DV9600/SpecialやDV9500/Special/Mark2では映像を意識し、音の可視化を目論んだ「高解像度・高明瞭度」な切れ味抜群のサウンドになっているのに対し、DV9500/Special/Mark3は、音場再現の「雰囲気感・気配感」を重んじた方向のチューニングを行っています。これらの改良により、全体として音のきめ細やかさはほんの少し失われたものの、反比例するように肌で感じる(耳には聞こえない)空気感や雰囲気感が大きくアップし、DV9600/SpecialやDV9500/Special/Mark2とは異なる雰囲気を持つミュージックプレーヤーに仕上がりました。


大幅な中低域の増強によりDV9500/Special/Mark3の低音は、サブウーファーを使わなくても、それを使ったのでは?と思うほど量感と厚みを持っています。中低音が充実したことで空間再現能力が倍加し、2本のスピーカーでもサラウンドと聞き違えるほどの音の広がりが得られます。信じられないかも知れませんが、スピーカーが2本でも音は後からも回り込んできます。高域もいたずらに明瞭度を追わず、柔らかさを加えたことで音がシームレス&スムースにより大きく広がるようになり、スピーカーの存在感を部屋から完全に消してしまうことに成功しました。

無闇に高音質を追いかけるのではなく、音楽的なバランスを重視した音作りにより、CD/SACD/DVD/DVDオーディオのどのディスクを再生しても、フォーマットによる音質差を全く関知できないほどのクォリティーの高いサウンドが得られます。映像なしでも「何が表現(再現)されているか?」が十分に伝わる「雰囲気の濃さ」は、他のDVDプレーヤーでは絶対に味わえないものです。映像も発色が豊かで動きが滑らか。フィルムを見ているような自然な画質に驚かれることと思います。


「自然さ」・「雰囲気感」を徹底的に追求したDV9500/Special/Mark3で音楽を再生すれば、まさに「その場」に居合わせていると錯覚するほどです。生産可能台数は、残り20台。コストは上昇しましたが、あえて価格は引き下げて、好評の内に完売したDV15/Black/Specialと同じ20万円(税込)としました。後継モデルとして、それを越える価値あるモデルに仕上がったと自負しています。

AIRBOWのDVDプレーヤーの話題を続けます。AIRBOWの最高機種のUX1 Supreme
emotionが、改良パーツの枯渇(ブラックゲートの生産完了)に伴い、残り3台の生産となりました。後継モデルは、いずれ開発しますが、ベースモデルの値上がりもありこの価格を維持できるかどうかは、難しいかも知れません。

UX1 Supreme EmotionのベースモデルはEsoteric製ですが、伝え聞くところによるとブルーレイプレーヤーの発売が切っ掛けとなり、少し販売が止まっていたUX1Piが動き出したそうです。理由は、ブルーレイが思ったほどではなかったと感じられたお客様が、最高級のDVDプレーヤーを求められたからだということです。UX1は、Esotericが4億円!といわれる巨額の開発費を投入して作り上げたオリジナルVRDS-NEOメカニズムが搭載されていますから、値上がりはあっても今後も作り続けられるでしょう。しかし、marantzやDENONを始めとする他の中規模量産オーディオメーカーは、すべて他社(主にPIONEER)のメカニズムを使っています。高級機がブルーレイにシフトすれば、メカニズムの生産もそちらにシフトして、とうぜん高級DVDメカニズムは作られなくなります。そうなると、本当に高級DVDプレーヤーが無くなります。同じ理由で、現在それらのメーカーから高級CD専用プレーヤーは、ほとんど発売されていません。その影響でAIRBOWも時期モデルは、中間機種が手薄になりそうです。そういう意味でもDV9500/Special/Mark3は、お薦めだと思います。

話をHDMI Ver1.3に戻します。新しい規格が発表される度に「技術の独占」が起きています。HDMIは、端子の意匠が登録されているため、ケーブルを作ろうとすると最低でも150万円!の権利金を意匠の使用料として支払わねばならないことをご存じですか?技術の進歩と歩調を合わせるかのように少数による多数の支配、富の一元化が加速度的に進んでいます。一部の国や企業にすべてがコントロールされてしまえば、それらにアイデアや技術努力だけでは太刀打ちできなくなります。その結果、少量生産メーカーが廃業し選べる製品の種類が減ってしまう。多様性が激減し、好きなものが選べなくなる。そんな趣味の世界が面白いでしょうか?

それだけではありません。大企業のやることは、技術的に見ても実に多くの矛盾に満ちています。確かに、便利だけれど、少なくとも現状では従来方式より音質・画質が明らか劣るHDMIという規格を決めたのは、日本の家電業界ではありませんが、それでもそれらの「真実」を隠蔽し、企業に不利益な情報を消費者に提供しないという姿勢が見え見えの宣伝広告はどうか?と思います。食品業界で賞味期限や産地、食材の内容表示などに対する風当たりが強くなっていますが、それに比べると家電業界の「表示」は、完全に野放し状態です。ICや機器を作っているメーカーが執り行う「性能検査」に一体どれほどの意味があるのでしょう?彼らが公表する「データー」と「音質・画質」との因果関係は?その答えは、考えるよりも明らかです。高い機種と安い機種のデーターなんてさほど変わらないからです。いくら「画質」や「音質」が測定できない曖昧なものだとしても、も
う少し事実に即した広告はできないものでしょうか?これでは、まるで健康食品やダイエットグッズの宣伝と同じではありませんか!

我々にできることは、メーカーに少しでも感動できる製品をなくさないで欲しい!私たちは、性能(感動)という価値を求めているということを伝えることです。インターネットを介した口コミの力は、決して小さくないのです。どんなに大きな企業も「お客様」には、絶対に!勝てないのですから。

しかし、悪いことばかりではありません。大手家電メーカー主導で進まざるを得ないホームシアター関係製品に対し、オーディオは規制も緩く大小様々なメーカーがその腕を競い合い、素晴らしい製品が次々に生まれています。

現在の逸品館お薦めの最高級モデルは、ZINGARI 1.12とAmpzilla+Ambrosiaのセットです。古き時代の良さと最新技術の良さが見事に融合し、ゴージャス(良い意味で)の一言に尽きる、見事な音を聞かせてくれます。また、sonus-faberのELIPSAもかつて無い美しさでクラシックを奏でます。

低価格製品では、4万円で買えるAIRBOW IMAGE11/KAI2の済みきった音や輸入再開されたFOCALのクォリティーの高いサウンドが20万円前後で手にはいるなど、コストパフォーマンスが向上しています。CDも最新モデルのYAMAHA CD-S2000は出来が良かったですし、AIRBOW CD6002Applauseも仕上がり抜群です。PM8001/Studioとの組合せで聞く音楽は、到底セット25万円(税込)のコンポから出ている音とは思えない、素晴らしいクォリティーです。

アンプも今ご紹介したAIRBOWの新製品プリメインアンプを始めとし、AUDIO-AEROの特価品やこれから年末に掛けて入荷が予定されている、QUADのトランジスター方式セパレートアンプなど、お薦め品が目白押しです。AETからもお待ちかねのLINEケーブルが発売され今年のオーディオは、またしても豊作です。その中から、何を選べばいいのか?音質を確実にグレードアップするには、どこから手を付ければよいか?判断に迷われたら、私たちがお力になります。どうぞ、お気軽にご相談下さいませ。

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