ホームシアターファイル 50号「画質と音質は“絶対”ではなく“相対”で決まる!」

最近、ホームシアター関連の広告やコラムでブルーレイの高画質・高音質を褒め称える内容をよく見かけますが、そのほとんどが「ブルーレイだから絶対に綺麗で音が良い」「ブルーレイでなければダメ」と決めつけています。しかし、こういう「決めつけ」は広告としてならぎりぎりセーフなのかも知れませんが、雑誌の記事や評論家のコラムの内容としてはふさわしくないと思うのです。なぜなら、それは間違いなく「嘘」であり「詭弁」だからです。
例えば、ここに一枚のDVDビデオがあるとします。それを数万円のDVDプレーヤーと数十万円のDVDプレーヤーで掛け比べると、当然後者の方が画質も音質も素晴らしいでしょう。しかし、それは「DVDというフォーマット」が変わったからではなく、それを「再生する環境」がアップデートされた結果です。では数万円のBDレコーダーで同じタイトルのBDを掛けた場合はどうでしょう?解像度(細やかさ)では、数十万円のDVDを越えるかも知れません。奥行き感や色彩は?動画の滑らかさは?そういう数値で表れない部分では、DVDが必ずしもBDに劣るとは言えないはずです。音質には、さらに大きな疑問を禁じ得ません。逸品館は日本でも有数のオーディオショップとして知られています。しかし、かなり高級なBDプレーヤーとAVアンプを使ってもBDディスクの音質は、私の知るピュア2chCD/SACDプレーヤーの足元にも及ばないからです。まして、あなたがTVしか持っていないとすれば、BDの高音質はまさに「絵に描いた餅」でしかありません。
メーカーやそれに寄生する雑誌、評論家が「BD賛歌」を歌い上げるのは別に大きな問題ではありません。問題は、彼らの風評に惑わされた他のメーカーや大手量販店が「それ以外を生産・販売しなくなる」ことなのです。一般市場では、BDプレーヤーでDVDが再生できるから問題なしとされるのでしょうが、本格的なシアターファンが望んでいるのは「自分が持っているソフト」あるいは「お気に入りの映画」を最高の画質・音質で楽しむことで、それをBDに置き換えることではないのです。未だに1000タイトルに満たないBDのために「高級DVDプレーヤー」が抹殺される。DVDを絶賛してきたメーカーほとんどがBDレコーダーへ移行し高級DVDプレーヤーの生産を打ち切りつつあります。何と極端なことでしょう?趣味の世界、とくに画質・音質を求めるような世界では「絶対」は存在しません。それよりも個人的な好みや環境が優先されるからです。そしてタイトルの少ないBDをあえて「見ない」という選択によって「DVDの高画質・高音質」が実現するとすればどうでしょう?現在、逸品館がAIRBOWのブランドで発売している「DVDプレーヤー」はその夢を実現してくれる製品ですが、それもベースモデルの枯渇により徐々に残り少なくなっています。
今、高級ハイビジョン・ディスプレイと言えば「フルスペック」が当たり前になりましたが、これも「フルスペックでなければ綺麗じゃない」というメーカーのプロパガンダの結果でしかありません。なぜなら、同じ映像を見たときに必ずしも「フルスペック」が綺麗だとは限らないからです。画質評価には解像度だけではなく、色合いや、動きの滑らかさという「別な角度からの指標」も欠かせません。それに対しメーカーは、「ディープカラー」という宣伝を持ち出してきた。しかし、そんなものは実際には存在しない「絵に描いた餅」でカタログ上の数字遊びでしかありません。
このようにメーカーの広告というのは常に「ご都合主義」で嘘の塊だと言うことを忘れてはいけません。その中のたった一つの真実は、彼らが薦めるのは「常に高価で彼らに利益をもたらす」という、単純な事実だけなのです。販売店は、メーカー側なのか?お客様側なのか?そのショップがお薦めする商品で「その姿勢」が判断できるはずです。


ホームシアターファイル 2008年 12月号 [雑誌]


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