HiVi (ハイヴィ) 2009年 11月号「今、何が必要かを考えたことはありますか?」

もうすぐ秋の新製品発表ラッシュが始まります。今年はどんな商品が「当たり」でしょうか?プロジェクターは、昨年と比べ大きな進歩はなさそうですが、地道で着実な改良が期待できそうです。価格は、もうあまり下がりそうにありません。TVは、PIONEERがプラズマから撤退し、SHARPも世界で始めてTHXを取得した液晶テレビTH1シリーズを打ち切るなど、トレンドは高画質よりも超薄型デザインや低価格へ変わりつつあるようです。しかし、量産によるコストダウンが効いたのか?高画質を謳っていない普及価格製品の中に、高額品よりも画質が優れるモデルを見つけられることがあります。いずれにしても、普及モデルと高級モデルの品質差は前よりも小さくなっているように思います。プロジェクターやTVのご購入時には、価格やメーカーの宣伝などにとらわれず、実際に「ご覧になられる」ことをお薦めします。
逸品館オリジナルブランドのAIRBOWは、いち早くDVDプレーヤーとAVアンプの高音質化に取り組み、現在ラインナップされている全製品が同じ価格の2chピュアオーディオ製品の音質を確実に越えるほどの水準に達しています。その音質を他社のAVアンプやDVD(BD)プレーヤーと比較すると、誰もがその「圧倒的な違い」に驚かれます。特にmarantz AV8003/MM8003をカスタマイズしたモデルは秀逸で、ベースモデルの優れた機能に加え、音質は200万円クラスまで含めた他社の追従を全く許しません。かなりのファンを抱えるAIRBOWの製品ですが、AVアンプに出しては今後もリーズナブルな価格で新発売することは可能です。しかしレコーダーやプレーヤーの主流がブルーレイに移り変わって1年以上が経過、国内音響メーカーが高級DVDプレーヤーからの相次いで撤退したことにより、DVDプレーヤーは優れたベースモデルが枯渇し、ラインナップできるのは50万円を越える製品だけになってしまいました。
古くを遡れば、HiViでもSONYプロフィールシリーズやVictorの超弩級S-VHSビデオ、3管プロジェクターがもてはやされた時代もありました。最新モデルに当時のシンパシーが感じられるでしょうか?答えは“No”です。頻繁にモデルチェンジと値下げを繰り返す今のデジタル家電は、“ものとしての魅力”が当時よりも遥かに薄くなっています。短期間に売られ、短期間で陳腐化する。それは本来の高級品の姿ではありません。5年先10年先を考えて“今の製品”を選ぼうとするのは、高額品を求めるときの当然の姿勢です。しかし、今発売されている製品で5年先も10年先も輝きを失わない製品があるのでしょうか?本当にその高級品が必要ですか?ソフトの少ないブルーレイを見るために、DVDの画質や音質、SACD/DVDオーディオの再生を切り捨てた高額プレーヤーが必要なのでしょうか?先を考えるのは良いことです。しかし、そのために“大切な今”をなおざりにしてもよいのでしょうか?価格ばかりに気を取られずに、本当に今何が必要か?を慌てず、流されずに、よく考えて必要な製品を選んで欲しいと願います。

カテゴリー: HiVi, 社長のうんちく タグ: , , パーマリンク