今年開催されたハイエンドショウ2010春では、各社がこぞって「PCオーディオ」のデモンストレーションを行っていました。逸品館もいち早く「PCオーディオ」を取り込んだ内容のデモンストレーションを行い、その仲間入りを果たしています。確かにPCをプレーヤーに使うとソフトや接続方法で大きく音が変わるので、「オーディオネタ」としては面白いと思います。
では、注目を集める「PCオーディオ」とは一体何なのでしょう?その言葉からは、「PCがオーディオをがらりと変えてしまう特別な存在」だと感じ取れますが、冷静に考えればPCは単なるデジタルトランスポーターに過ぎず、PCを導入してもアンプやスピーカーはまったく変わることがありません。しかし、ハイエンドショウではPCを導入することで「魔法のように音が良くなる」という現実をねじ曲げた解説を多く耳にしました。これは、現場での「結果」を「技術的な方法論」にすり替えた「販売促進行為」でしかありません。すこしでも売り上げに繋げたい苦しい事情を察しても、一般の方も訪れるオーディオイベントで従来と変わらない「えせ技術論」や「えせ解説」を行うのは絶対に止めて欲しいと思います。オーディオは音楽を聴くための「方法」であって、「オタクネタ」ではないと私は考えるからです。特にPCオーディオに興味を持たれるエンジニアの方は、しっかりとした専門知識を持つ方が多く、彼らに「付け焼き刃」は通用しません。
さて苦言はともかく、PC/ネットワークプレーヤー(オーディオではおかしいので、とりあえずそれらをまとめてPCプレーヤーと呼び変えます)に私が感じる最大のメリットは「スペースファクター」です。部屋中に散乱し置き場所のなくなった「パッケージソフト」を小さなデーターストレージ(HDDなど)に収納すれば、部屋がかなり広く使えます。電子辞書のように簡便で、素早く音楽を楽しめるのがPCプレーヤー最大の長所です。また、ソフトウェーアーを入れ替えて、低コストで簡単に「音質の変化」を楽しむこともできます。
音質はどうでしょう?デモンストレーションでは、PCプレーヤーが従来型のCD/SACDプレーヤー(ディスクプレーヤーと呼びましょう)より優れると説明されていましたが、新技術が常に持ち上げられるのはこの世界の常なのでそれを鵜呑みにしてはいけません。PC関連商品は量産効果で安く、ある程度の音質までなら「安く」出せます。しかし高級オーディオと同じレベルを求めると結局カスタムメイドの高級機が必要となり、従来のオーディオと同等のコストが必要となります。
それにしても近年のデジタル技術の進歩は驚くほどで、デジタルオーディオの黎明期に技術者が考えていた夢が完璧な形で実現しつつあります。例えば、部屋の悪影響を完全に消してスピーカー本来の能力を100%発揮させることのできる「音響パワーイコライザー Real Sound Lab Apeq-2pro」や、クロック入力のある機器に接続して音質を大きく改善する「クロックジェネレーター Antelope Audio OCX」、さらにはデジタル信号を経由させるだけで、浄水器のように信号からジッターを取り除く「高精度クロックジェネレーター内蔵ジッターキャンセラー Brainstorm DCD-8」などの装置が登場しました。10月に開催されるハイエンドショウ2010秋では、専用ブースをお借りして、これらの装置のデモンストレーションも行いたいと考えています。
P.S.
逸品館の「東銀座試聴室」がいよいよオープンしました。平日は「完全予約制」ですが、土曜日は「全日オープン」する予定です。試聴室へのお問い合わせは、お電話(06-6644-9101)もしくは逸品館のホームページからのお申し込みをご利用くださいませ。