尖閣諸島の動画が流出し、大騒ぎになっています。メディアが話題の中心に取り上げているのは、「画像を流出させた人物」ですが、本当にそれで良いのでしょうか?
例えばつい最近、NHKの記者が関取に捜査情報を流したという理由で処分を受けました。彼はその情報と引き替えに、角界とより濃密な関係を結ぼうとしたのです。つまり彼は情報をネタにして、「金儲け(自己への利益誘導)」を行ったのです。常に中立の立場であるべきメディアが情報をネタに自己への利益誘導を行うなど以ての外だと思います(だからこそ処分を受けた)。
しかしこの事件は氷山の一角に過ぎません。本来「国民の利益」を守ることが存在意義であるはずのメディアが、国民の利益を考えずに報道を行うことが多すぎると思います。いつからかメディアは、自身で取材することなく提供された情報だけを無責任に垂れ流ししています。一部のニュースで取り上げられたように、尖閣諸島の画像はメディアが流すべきだったはずです。命に代えても、国民の知るべき権利を守る。それが正しい報道の姿勢ではないのでしょうか?いつから報道が「金儲けの手段」にすりかわってしまったのでしょう?金の奴隷に成り下がったメディアには、ひとかけらの正義も期待できないのでしょうか?
金のにおいに敏感なメディアという意味では、オーディオ雑誌や車の雑誌はさらに深刻です。一部のメーカーと結託して情報をねつ造し、消費者に不利益や不快感を与え自分たちが甘い汁を吸うのです。まるでメーカーが作るカタログのような雑誌が有料とは、おかしな話です。
そんな中で最近、オーディオ雑誌やメーカーが「新しい商材」として飛びついているのがPCオーディオです。高級オーディオが行き詰まりつつある今、新しい商品に飛びつきたい気持ちはよくわかります。しかし、従来のオーディオですらきちんと解説、論評できない雑誌や評論家にさらに複雑なPCオーディオがきちんと説明できるはずがありません。
たとえば、PCオーディオが「CDプレーヤよりも音が良い」という最大の理由に「PCだからエラーがない(デジタルデーターに誤りがない)」との主張があります。誰が言い出したのかはわかりませんが、それを検証せずばらまいたメディアと新しい情報なら何にでも乗っかるマニアの吹聴によって、それが既成事実になっています。
しかし、私は今までの経験や実験からこの既成事実違っていると感じ、「CDプレーヤーはエラーをしていない」ことを実験で立証しようと考えていました。もちろんどうすればそれができるか?もわかっていましたし、その設備もありました。しかし、残念ながら時間が作れずに実際に情報として弊社のHPに公開するまでには至りませんでした。
ところが、今月発売されたオーディオベイシック誌の別冊「PCオーディオfan 3号」で、評論家の御田照久さんがその実験を行い「CDプレーヤーがほとんどエラーを起こしてないいと」を発表されたのです。たいしてお金にならないし、世間の常識を打破することで大きな物議を醸し「攻撃の的」ともなりかねない危険な記事を、これほどの情熱を持って書いた評論家を私は久しく知りません(御田照久さんのブログはこちら)。
さらにこの雑誌には、信頼する評論家の一人である麻倉怜士さんもPCに収録されるデジタル音声ファイルについて、実にわかりやすく的確な解説を掲載されていました。これだけの記事を書くためにはかなりの時間を取材と勉強に費やさなければならず、執筆料に全く見合わない仕事だったと想像できます。
では、彼らはなぜ、そんな報酬に見合わない仕事ができるのでしょう?それは、音楽や読者皆様に対する「愛情」や「プロ意識」の現れだと思います。記事を読み、その真意をくみ取った私は、目に涙がにじむほどの感銘を受けました。
この雑誌には素晴らしい記事と同列に、従来型の評論記事も掲載されています。本物の評論家が書いた記事と、えせ評論家が書いた記事の違いは、一読すればすぐにわかります。お金をくれる「メーカー」の方を向いて、読者を煙に巻いてだましにかかる評論記事には、機器の悪口は一切書かれません。嘘は書かれていませんが、そのかわり文章はどこで聞いたかわからないような「専門お宅用語」が散乱し、いったい何を言いたいのか?さっぱりわかりません。読むだけ時間の無駄。そう感じさせる記事も半分以上はありました。しかし他の雑誌では、ほぼ100%近くがそういう「無駄な記事」ばかり、意味のない文字の羅列ばかりです。
私はこれまで口を酸っぱくしてあらゆる雑誌社に「営業のために曖昧な記事を書かざるを得ないのは理解できるが、本当のことも常に数%以上、できれば一割くらいは書いて欲しい。そうしないと、メディア離れ、オーディオ離れが起きてしまう」と言ってきました。それが明確に実現したのは「PCオーディオfan 3号」が初めてかも知れません。少なくとも、今回ご紹介を差し上げた二人の評論家は、しっかりと「読者の方向を向いて記事を書いて」下さいました。それをうれしく、また力強く思います。ネットに情報が氾濫する現代に有料の雑誌は、「厚み」を競うべきでなく、「質」の勝負に持ち込まねば先はありません。
経済が不安定な中、オーディオに限らず専門誌は営業(収入)のため広告主のメーカーとの関わりが深くならざるを得ないので、内容は今まで以上に「お手盛り」されています。言い換えるなら、メーカーが発行する有償カタログが専門誌なのです。メディア全体で拝金主義的な傾向がますます強くなる中、このような雑誌が発刊されたことを私は画期的だと思います。忙しい中「PCオーディオfan 3号」を出版された責任者、共同通信社の金城さんにも深い感謝を覚えます。お疲れ様、本当にありがとうございました。
オーディオベイシック別冊の「PCオーディオfan 3号」は、久しぶりに骨のある、読む価値ある書籍だと思います。そして何よりも、これから「もっと簡単に」「もっと低コストで良い音で音楽を聴きたい」とお考えのオーディオファン、音楽ファンの皆様にとってとても役に立つ内容に仕上がっていると思うのです。是非ともこの雑誌を購入することで、彼らを応援してあげてください。
さて話を本題に進めますが、PC(ネットワーク)関連のオーディオ情報は従来にも増して「眉唾」が多く、情報を鵜呑みにしないように「音を耳で聞いて判断する」ように注意して欲しいと思います。雑誌、ネット、イベントでの音と論説を聞く限りでは、ほとんどの評論家、口が達者なマニアは、実際にきちんと音を聞いて判断できているとは思えません。彼らの頭にはまず「答えありき」で、それを裏付けられる「記事(音)」をねつ造したいだけなのだと思います。あるいは彼らのシステムの音質に問題があるけれど、経験が足りないためにそれがわからないのだと思います。とにかく彼らがやっているのは、「知識で信じたこと」を至らない言葉と間違った技術論で論じることだけのように思えます。残念ながらそこには、「音楽への愛情や読者への敬意」は読み取れません。
もちろんこれは「PCオーディオ」に限ったことではありません。現在判明している技術論でオーディオの音質変化が説明できなくても、実際に出てくる音は変わります。さらにその事実を真摯に受け止め、勉強と実験を重ねている「最先端のプロ」は、それを何よりも強く感じていますし、可能な限り技術論を進化させて、音が変わる理由の説明を行う努力を厭いません。なぜそこまで「オーディオ」に入れ込むのか?答えは一つです。彼らもまた音楽を愛し演奏家の努力に応えるための努力を惜しみません。さらには、情報を購読される皆様への責任、そして何よりも音楽とオーディオを愛する方々に、「本当にいい音」で音楽を聴いて頂くための少しの力にでもなれればよいと願って止まないからです。
話は変わりますが、先週開催されたインターナショナル・オーディオショウ、ロッキーインターナショナルの音はいかがでしたでしょうか?私としてはもっといい音を出したいと思ったのですが、なんとか聞き苦しくない程度の音は出せたと思っています。それでも初日は、スピーカーを動かして自分の存在をアピールする癖のある一人の評論家が両端のESL2905を動かしたため、後半はESL2905の音が少し悪くなっていたかも知れません。また、二日目はCD/アンプの組み合わせを間違えていたため、時間帯によってはFocal Stella EMの音が初日よりも悪かったようです。それでもStella EMの度肝を抜くような低音や、コンデンサー型とは思えないリジッドな音で鳴っていたESL2905に驚かれた方もいらっしゃったのではないでしょうか?私自身、ESL2905からあんな音が出せるとは思ってもいなかったのですから。
このロッキーインターナショナルのブースでは、麻倉怜士さんも講演時間を持っていらっしゃいました。私が見た限りでは、評論家の中で彼一人だけがショウのオープン前に「現場での音出しチェック」を行い、さらに持ち時間終了後もショウが終わるまで、勉強のため他の評論家の時間を見学していらっしゃたように見受けられました。たったそれだけの努力すらせずに「でかい顔」をしているのが、今のオーディオ評論家の実態です。あんなの「いらない」と思うのは、私だけではないはずです。
そういえば、麻倉怜士さんは毎月定例で「ビックカメラ」でホームシアター関係の勉強会を開催されているようなのですが、周知が行き届かず参加者が非常に少ないと聞きました。内容は折り紙付きですし、最大で10名程度のフレンドリーな勉強会と聞いています。よろしければ詳細を確認し、時間が合えば参加されると役に立つと思います。
私憤はともかく、ショウは大変盛況で昨年よりも一割以上多くのお客様にご来場頂けたようで一安心しています。私も専門家として恥ずかしくない情報を逸品館のHPで発表して行こうと思います。ありがとうございます。
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