前号の広告では「オーディオの終焉」という、思わず体が硬くなってしまうようなタイトルのコラムを掲載した。決して、それは間違いではない。しかし、オーディオは形を変え「新たな時代」を迎えようとしている。
アナログプレーヤーの最盛期は、CDが台頭した時期とクロスオーバーする。かつて頂点を極めたアナログは、時を経ずして主役の座をデジタルに譲り渡したが、この変化は最近のディスクメディア衰退とダウンロードビジネスの活性化によく似ている。全盛期を迎えたCDは、今ネットワークプレーヤーの台頭で衰退しつつある。歴史に学び逆説的に考えるならば、ネットワークプレーヤーが台頭し始めた今こそ「CDプレーヤーのビンテッジ時代の到来」と言えるのではないだろうか?それを裏付けるようにTADそしてEsotericから超弩級一体型CD/SACDプレーヤーが発売された。
TAD D600は時代に流されることなく、連綿と培ったアナログ技術と最新のデジタル技術を見事に融合して作り出された。その音は、まさしくビンテッジサウンドだ。厚みがあり、色彩が濃く、味わい深い。地にしっかりと足の付いた低音と、無理なく伸びやかに消えてゆく滑らかな高音。このプレーヤーでCDを聞くと「マスターテープの記憶」がまざまざと蘇る。そう、これはアナログの頂点を極めなければ作れない音だ。過去にPIONEERはエクスクルーシブ(EXCLUSIVE)という独自の高級モデルを開花させた。そのEXCLUSIVEを超えるサウンドとして、新たに生み出されたTADだからこそ実現できた「熱い音」。このプレーヤーを、今聞かなければ後悔する。今後これ以上アナログ的な音をCDから取り出せるプレーヤーが登場するかどうか?確信が持てないほどの素晴らしい出来映えだからだ。
Esoteric K-01は、常にデジタル時代の先陣を切ってきたEsotericらしい「先進の技術が溢れる製品」だ。DACには旭化成の最新モデルを搭載し、メカニズムはEsotericお得意のVRDS、そしてネットワークプレーヤーとして使えるように192KHz/24bit入力に対応するUSB端子が備わっている。およそ7年ぶりというフラッグシップの発売が、この時期になったことで発売するか、しないか?社内でも喧々諤々の論争があったと聞く。しかし、結果は生産が追いつかないほどの大ヒットとなった。32Bitが生み出す広大なダイナミックレンジから繰り出される「高精細度なサウンド」は、過去に例を見ない。同じCDを聞いているとは思えなほどの細かい音、圧倒的な情報量が再現されるが、K-01はD600と対照的にEsotericらしいクールな音調に仕上げられている。こちらも凄いが、これは未来に通じる音のように思う。ネットワークプレーヤーの進化と共に、K-01の延長線上にもっと凄い音が現れるだろう。いずれにしても、この2台はCD時代の幕を引くにふさわしい製品に違いない。
メディアの変革は25年ごとと言われているが、CDが登場してからおおよそ30年の2010年に、オーディオは新たな時代に入る。デジタルの台頭と反比例して、本格的な音楽は衰退している。今メディアの主流は「映像」に変わったからだ。衰退する音楽文化の中から、今後よりよい音楽が生まれるかどうか?それはわからない。しかし、落胆する必要はまったくない。CDを超える音質のハイビット、ハイサンプリングの音源がダウンロードでより簡単に手に入るようになるから「高音質音源」に困る必要はなくなるし、数が売れないという理由で絶版になったCD(音楽コンテンツ)もダウンロードで再配信されつつある。今以上の音質の音源、絶版であきらめていた録音がダウンロードで蘇る。オーディオファンと音楽ファンにとってこれほど喜ばしいことは他にない。音源さえあれば、素晴らしい演奏さえ遺されていれば、オーディオが消えることはない。交響曲の多くが時に磨かれてその輝きを増したように、遺されている録音も時代に磨かれてその輝きを増すのだろうか?ダウンロードで演奏に永遠の命が与えられた今、その可能性は非常に高い。これからは、ますますオーディオから目が離せなくなりそうだ。
逸品館では時代に合わせ、ビンテッジCDプレーヤーのTAD D600、Esoteric K-01を展示導入するとともに、高音質クロック・ジェネレーターAntelope Audio OCX、PCに対応する高音質フォーマット変換器Brainstoam DCD-8などをそれらの機器と合わせて展示し、CD/SACD/DVD/DVD-Audioは無論、メモリー記録の音楽ファイルの高音質再生にまで展示機を対応させている。さらに驚くべきは、オリジナルのSPUをはじめとする100種類に及ぶカートリッジ(非売品)やオリジナルのウェスタン300B(非売品)を展示し、アナログレコードを超高級アナログプレーヤー(30万円のMCカートリッジ装着)で再生できるシステムを備えていることだろう。今の3号館は、まさに「新旧オーディオ百花繚乱」状態にある。そうそう、TANNOY Kingdom Royalも展示導入した。こんな時代だからこそ、より「贅沢にオーディオを楽しんで欲しい」。私は心からそう願ってやまない。ご来店を心よりお待ち申し上げています。
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