STEP5 ルームアコースティックを見直そう

ルーム・アコースティックの考え方

ルームチューンの基本

スピーカーの音は水面を波紋が広がるのと同じように、部屋の中を進んでいます。もし、水面(部屋)が無限に大きいなら波紋はどこにもぶつからずに綺麗に広がってゆけるのですが、実際にはそんな大きな部屋は存在しませんから、波はいずれ壁に当たって跳ね返り、そのエネルギーが尽きるまで反射を繰り返して消滅します。
反射した波(反射波)は、広がろうとする波(直接波)とぶつかり、混じり合い、新たな関係が生じます。それを「干渉」と呼び、干渉によって新しく合成される波のことを「干渉波」と呼んでいます。
部屋という水面に、音という波を綺麗に広げることを目的に、でたらめに発生している「干渉波」を調整し、直接波と反射波がお互の邪魔をしないようにしようというのが、ここで説明するルーム・アコースティック調整法の基本的な考え方です。
ここからは、ルーム・アコースティック調整法という呼び方はやめて、「ルームチューン」という、もう少しスマートな呼び方に変えましょう。
ルームチューンの方法には、大きく分けて次の二つが考えられます。

  1. スピーカーの位置を動かし壁や床との距離や角度を変えることで音質を改善する方法。
  2. スピーカーの位置を変えずに、吸音・反射パネルなどを使うことで周囲の環境を変え音質を改善する方法

部屋の広さとスピーカーの大きさの関係

話をルームチューンに進める前に、部屋に応じた大きさのスピーカーを選ぶことの大切さを説明しておきたいと思います。部屋を水面に、スピーカーの大きさを波に例えて説明しましょう。
水面に波紋を綺麗に広げるための、水面(部屋)の広さと、波(音)の大きさには重要な関係があります。
プールでは思いっきり波を大きくしても波紋は綺麗に広がってゆきます。水面(部屋)が十分に広い場合には、音源が大きくても波紋の広がりに乱れは生じにくいからです。
しかし、浴槽で同じように大きな波を起こしたらどうなるでしょうか?浴槽の水面は、瞬時に大きく乱れてしまうでしょう。水面の広さが狭い場合には、波の大きさをあまり大きくすると波紋が綺麗に広がらなくなってしまうのです。
この水面の大きさと波の大きさの関係は、部屋の大きさとスピーカーの大きさに当てはまります。
部屋に対してスピーカーが大きすぎるとそのスピーカーを上手く鳴らすのが非常に難しくなってしまうからなのです。部屋に波紋を綺麗に広げる(音場空間を広くする)ためには、部屋の大きさに応じたサイズのスピーカーを選ぶことが大切です。
特に音の広がりと、楽器の音が混濁しないような透明度を求めるなら、「音源が大きい=大型スピーカー」を狭い部屋に入れるのは避けなければなりません。
なぜなら、大型スピーカーはユニットの数も多く、またその位置も離れているため、音源が多重になることが原因で、狭いスペースでは発生した音波が重なり音を濁らせてしまうからなのです。
できれば、部屋の広さが8~12畳以下の場合には、ユニットの数が少なく「点音源」に近いスピーカーか(ユニットの位置を近づけてあるPMCなどは最適)、2本の小型スピーカーとスーパーウーファーの組合せ(3Dシステム)などをお選び下さい。
間違っても、狭い部屋に無理やり大きなスピーカーを入れないように注意してください。

波紋を綺麗に広げるためにはスピーカーと壁との関係が大切

さて、先ほどの水面に波紋を広げるモデルを再び利用して、ルームチューンをもうすこし詳しく説明しましょう。
洗い桶程度の小さな入れ物を用意し、その「水面を指でつつく」ようにして実際に波を立ててみましょう。 まず始めに、一本の指で「洗い桶の中央付近」に波紋を起こしましょう。波紋は周囲に向かって綺麗に広がるはずです。次に指の位置を中央から、徐々に縁に近づけてください。波紋を起こす位置が中央から縁に近づけば近づくほど、波紋が綺麗に広がらなくなります。
今度は、2本の指で波紋を起こしながらその指と指の間隔を広げたり狭めたり、あるいは指の位置を「洗い桶の中央や縁に近いところ」に移動しながら、「波紋の広がる様子」を観察してください。
二本の指の間隔や、波を起こす位置によって、波紋の広がり方がずいぶん違うことを確認していただけたでしょうか? この実験では、洗い桶がリスニングルーム、波紋を起した指の位置がスピーカーの位置に相当しています。
目的は閉ざされた水面では、波紋を起こす場所を変える(スピーカーの位置を変える)ことで、水面全体の波の乱れを減らすことができる(音の広がりを改善できる)ということを理解していただくことです。

水平だけではなく垂直方向にも配慮が必要

話を簡単に進めるため、まず「水平方向への音の広がり」だけについて話を進めましたが、音は水平方向だけではなく「垂直方向」にも広がります。 そのため、壁とスピーカーの位置関係が音の濁りを減少させるために重要であったように、「垂直方向への音の広がり」を改善するには、「天井や床」と「スピーカー(ツィーター)」の位置関係(床や天井からの距離)に配慮することが大切です。
現在、スピーカーの高さを決めるひとつの指針となっている「ツィーターを耳の高さに合わせる」という方法は、そういう意味では少し説明不足です。
なぜなら、正座のような低いリスニングポジションで耳の高さにツィーターを合わせた場合、スピーカーの位置が床に近くなりすぎ、床から高音が反射して「悪い干渉」を引き起したり、あるいは「低音が床を這う」などの原因で音が濁るからなのです。
これは洗い桶の縁に近いところで波を立てたとき、波紋が綺麗に広がらなくなったモデルを、縦方向に置き換えていただければ理解できると思います。 先ほど申しあげたように、床に直に座ってステレオを聴くような場合や、サラウンドシステムのエフェクト(センター)スピーカーなどの設置時に、失敗を犯しがちなので十分に注意してください。
このようにスピーカーの位置が低すぎたり、あるいは天井に近すぎたりすると、上下方向への音の広がりが阻害され、音場が平面的になり、楽器の分離が悪くなります。
スピーカーのツィーターが床や天井から少なくとも1m以上離れるように設置するか、床と天井の中間くらいになるような位置に、設置すると良好な音質が得られますのでお試しください。

スピーカーの最適な設置場所の見つけ方

スピーカーのセッティングは片方ずつ順番に行う

さて、洗い桶の実験で「指の位置を変えた」ときに水面を広がる波紋の乱れ方が変化することを体験しました。
そして、「綺麗に波紋が広がる指の位置がある」ことに気がつきました。つまり、リスニングルームの中でも「音が濁りなく十分に広がり、一切のストレスを感じることなく音楽を聴けるスピーカーの設置場所があり、それを見つけることが大切」だということなのです。
洗い桶の水面は「丸い形」でしたが、部屋は「長方形」ですから、洗い桶ではなく「浴槽」に波を立てることで、もっと現実的な実験を行うことができます。
これからその具体的な方法を説明しますが、この調整では2本のスピーカーを同時に鳴らすと、左右の音が混じり合って混濁するため、部屋の濁りがわかりにくくなりますから、必ず「片側ずつ」順番に行ってください。
では、部屋の音を良くするために、スピーカーの置き場所を少し変えて、壁や床天井などからの反射音の干渉を整えましょう。
まず、ラジオの「ザー音」や「ピアノのソロ演奏のモノラル盤」などの「ホワイトノイズに近い音源」を用意してください。
(AUDIO TEST CD-1 / YDDS-2がお薦めです)
音楽ソフトの中でピアノのソロ演奏が適しているのは、ピアノの音が「ノイズ成分」を沢山含んでいるのと、音源の位置が比較的明瞭なためです。

調整法 [1]

片側のスピーカーから「ザー」音を流し、スピーカーの位置を変えながらその音の変化を聴いてください。スピーカーの角度をほんの少し変えたり、位置をほんの数㎜、あるいは数㎝動かすだけで、ノイズの「音」が大きく変わるはずです。この時、一度にスピーカーを大きく動かしすぎないように注意してください。
ノイズの音が「濁った音が混じったモーやジャーという音」から、「濁りの少ないサーやシャー音」に変わってきたら、それは悪い干渉が減って音が良くなってきた証拠です。
音源がピアノの場合には、「響きの濁りが減少し、タッチの強弱がハッキリする」ように聞こえるようになれば、スピーカーの位置が良くなったのです。
この調整を順番に左右のスピーカーで行えば、音場の濁りが激減し「楽器の分離が向上、低音や高音がハッキリと聞きとれる」ようになるはずです。
この調整方法はオーディオ・スピーカーのみならず、あらゆる音を出す機器の設置の基本です。
ラジカセやミニコンポはもちろんのこと、パソコンやカラオケのスピーカーの設置位置も同じように、ノイズのような音を出しながら、その音が「澄んで聞こえるよう」に位置調整するだけで、明瞭度が高まり、聞き疲れがしなくなるはずです。

レーザーセッターを使い2本のスピーカーの位置関係を整える

レーザーセッターを使い、さらにスピーカーの位置調整を追い込んで音を良くしましょう。
干渉は、複数の波が混じり合い重なることによって生じますが、ステレオ再生では当然「左右のスピーカーの音が混じり合うとき」に一番大きな「干渉」が生じます。この干渉を整え、音を綺麗にしてくれるのが、ステップ[4]で説明した「レーザーセッター」なのです。
[1]の調整を行って、部屋とスピーカーの関係(壁からの距離と角度の関係)を整え「汚れた干渉」を減らした後、左右のスピーカーから広がる波紋を、綺麗に重なるように調整すれば、ステレオシステムは、あなたが信じられないほどの素晴らしい能力を発揮します。
これらの調整は地道で努力のいるやりかたですが、すべての作業を慎重に高い精度で行うなら、必ずあなたの努力に報いる以上の音質改善効果があることを保証します。

調整法 [2]

レーザーセッターを使ったスピーカーの位置調整を行います。方法はステップ[4]をご参照下さい。

さらにスピーカーの位置を微調整する

調整法 [3]

[2]の調整でスピーカーの位置や角度を変えてしまうため、[1]の調整が「無効」になってしまいます。残念ながら、今のところ、一度に[1]と[2]を両立させる方法は見つけられていません。
そのため、面倒でも[2]の後に[1]をもう一度行い、その後にまた[2]を・・・というように、[1]と「2」の調整を繰り返して、小刻みにスピーカーの位置を変えながら、[1]と[2]が両立する「最良の妥協点」を見いださなくてはなりません。

調整法 [4]

[3]までの調整を根気よく行った後、最後にもう一度、モノラル演奏のソフトを左右片Chずつ鳴らし比べてください。
どうですか?左右で微妙に音色が違って聞こえませんか?もし、まだ左右の音色が違って感じられるなら、さらに微調整を行いましょう。
もうここまでの調整でかなり集中力を使い果たしているはずです。もし、「疲れ」を感じるようなら、ここから先の調整は「後日体調が良く、やる気十分のとき」に行ってください。
まず、必ず今のスピーカーの位置を「床にテープを貼るなどの方法でマーキング」して下さい。そして、そのマークの位置からほんの少ししかスピーカーを動かさないように注意しながら、[1]と[2]が両立し、さらに左右のスピーカーで別々にモノラル演奏を聞いたときの音が「ほとんど同じ」に聞こえるように、スピーカーの位置を追い込んでください。

最終確認のため「モノラル演奏」を再生すると!!!どうですか???

「仮想センタースピーカー」が出現したのかと思うほどコンパクトに、2本のスピーカーのど真ん中に「音像」が浮かび上がるはずです。
この状態でステレオ録音のソフトをかけてみれば完全に「スピーカーは部屋から消えている」はずです。さあ、お気に入りのソフトを思いっきりお楽しみ下さい!
もし、モノラルソフトの音像が「コンパクトに中央」に位置しているにもかかわらず、ステレオソフトの音像が散漫に感じられたとしたら、それはあなたのせいではなく「録音エンジニアの仕業」なのです。
この素晴らしく調整された状態のステレオで演奏するマルチマイク録音が、「正しい位置にマイクを設置して行われたワンポイントステレオ録音(MS方式などは除外)」に勝るところはあるでしょうか?
この調整を行わず買ってきたスピーカーを、任意の位置に「ポン」と置いただけでは、スピーカーはその性能の10分の1程度の能力しか発揮することは出来ないのです。
まず機器の買い換えを検討する前に、面倒でもスピーカーのセッティングを追い込んでください。そうすれば、多くの問題が解消すると共に、残された問題点が明確に見えてくると思います。そして、有効な解決法を探しあぐねたときには、迷わず「逸品館」に助けをお求め下さい。力になれると思います。

響きは音楽を楽しくする

空気中では高音が先に減衰する

さて、ここまでは「スピーカーの位置を変えることで音を良くする方法」を中心に説明しましたが、いよいよ吸音材や反射パネルを使った「ルームチューン」の説明に入りましょう。
ステップ[2]で音の認識には、音波の輪郭情報が深く関わっているということを説明しました。また、雷鳴を例にあげて音源の距離が遠くなればなるほど、「空気の弾力性によって高域が減衰(空気のバネ効果や粘りけによって圧力が低下)」し明瞭度=輪郭情報が損なわれると説明しました。
良質なヘッドホンで聴く音楽を思い出して下さい。全部の音を一度に聞き分けられないほど音が細やかなのに、音が混じり合わず明瞭度が高く、楽器の立ち上がりも早く、高音も切れ味鋭く伸びているはずです。それは、音源と鼓膜の距離が近いからです。
しかし、スピーカーから聞こえる音はそうではありません。なぜなら、雷鳴が遠く離れれば鈍くなるのと同じ理由で、スピーカーから出た音も距離が離れれば「高音のエネルギー」が減少し、ヘッドホンとは比べものにならないくらい、輪郭のぼけたピントの合わない曖昧な音になってしまうからなのです。

響きの重要性

この失われてしまう「高音の伸びや輝き」を補うにはどうすればよいのでしょう?
良い例をクラシックなどの演奏が行われる「コンサートホール」に見つけることができます。 もし、500人以上の客席がある大ホールでバイオリンのソロ演奏がおこなわれる時に、このホールに一切の反射がなければどうなるでしょう?
最後列の客席で聞くバイオリンの音は、モコモコとしたとても楽器とはいえないような曇った音になってしまうはずです。
しかし、実際の演奏会でそうならないのは、コンサートホールに「響き(高音の反射)」を利用して、楽音を輝かせ、音楽を生き生きと表現するような工夫があるからなのです。
この響きの重要性は、観客が一人もいないリハーサルと本番の楽音の違いを知っていれば、もっと容易に理解することができるはずです。
なぜなら、リハーサルでは適当なバイオリンからさらっと音を出すだけでも「非常に美しい楽音」でホールは満たされます。それは、ホールの響きが豊かだからです。
しかし、本番では「観客が高音を吸収してしまう」ため、もっと高音のエネルギーが強く、音の伸びるバイオリンでないと、高域のエネルギーが不足して音が曇り、音楽が生気を失なってしまうのです。
このような経験は、プロの演奏家なら誰もが知っているどころか、彼らはいつも本番でいかに「楽器の音を最後席まで飛ばそうか」と悩んでいるのです。だからこそ、バイオリン奏者は、あんなにも強く、楽器にこだわりを持つのです。

薄い壁の表面には吸音措置が必要

もう一つ忘れてはならことがあります。それは、「薄い壁」が音を「反射」するよりも大きな音で、「共振」しているということです。 バイオリンやギターなどの共鳴板を持つ楽器から、大きな音が出る原理をご存じですか?それは、弦の振動が共鳴板を共振させているからですが、「薄い壁」や「床」なども楽器の共鳴板と同じように、スピーカーから出た音のエネルギーで「振動」し「大きな騒音」を発生しているのです。
壁や床がどれくらいの音量で「共振」しているかを調べるために、「手のひらでドン」と叩いてみてください。ゴツンという詰まったような音がする壁なら、大きな問題はないと考えて大丈夫ですが、もし「カ~ン」や「バ~ン」、「ビ~ン」というように、叩いた音が尾を引くように聞こえるなら、それは「壁や床が盛大に共振している証拠」なのです。
この「共鳴音」を消さなければ、いくら高価な機材を買い込んでも絶対に音は良くなりません。
この「共振」がたぶんリスニングルームで「音を濁らせる一番大きな原因」になっているはずなのですが、うかつにも今までそれを見過ごしていました。
それを教えてくださったのは「サーロジック・村田さん」です。彼は長年スタジオやコンサートホールの設計と音響調整の仕事を続ける中で、この事実に気づいたそうです。響きが部屋の音を良くすることを教えてくださったのも村田さんなのです。
この「共振」する、薄い壁や床の悪影響を防ぐ方法はただひとつです。その表面に「厚手の柔らかいカーテン」や「厚手のカーペット」などを敷いて共振をおさえることなのです。太鼓の表面を毛布で覆うと音が出なくなるのと同じ理屈です。部屋の見かけを変えるのがどうしても嫌な場合は、レゾナンスチップや、フェルトの端切れなどを張ることでも、ある程度の効果はあります。(貼り付ける位置は、「振動の腹」です)
しかし、やはりそれでは響きの成分が不足しますから、乱反射パネル(サーロジック LV1200)を使って、反射を補ってください。このパネルは壁にぶつかる音のエネルギーを吸収する働きもありますから、相乗効果で非常に大きな改善が見込めます。

SA LOGIC LVパネル

このパネルの効果的な設置方法は、ステップ[6]で説明いたします。

視覚と聴覚の連携

ステップ[2]で、5感は互いに関連性をもって「情報の精度を向上している」と説明しましたが、その一番身近な例が、「味覚と嗅覚の連動」です。鼻をつまんでものを食べれば味がわかりにくいというのがその証明です。
目を閉じてものを食べることには恐怖感を覚えますが、それは「あらかじめ食品を見ておくことで、事前に味覚と嗅覚のフォーカスをその食品に合わせておく」ことができなくなるために、心理的なとまどいを生じるからなのです。
聴覚と視覚も、味覚と嗅覚と同じように、かなり強い関連性を持っており、音の方向性や広がり感には「視覚」が大きな影響を与えています。そのため、AVシステムでは、音の定位感や広がり感がずいぶんと見た目に引っ張られますから、音質チェックを行う場合には映像を消してください。
映像を消した途端に音の方向性や定位感が損なわれたり大きく変化するようなら、スピーカーの位置を再調整した方がよいでしょう。「映像の中心」と「音の中心」がずれたまま長時間映画などを見続けると、大きな疲労感を覚えることになります。
また、良くある相談に「片側だけに壁があるため音像が中央に定位しない」という問題でも、視覚による心理的な影響がほとんどで、レーザーセッターを使って精密にスピーカーを位置決めした後で、目を閉じてチェックをすればまず間違いなく音像は中央に定位します。
スピーカーケーブルの長さが左右で違うと、音像が中央に定位しないというのも、ほぼ100%心理的な影響によるもので、高品質なスピーカーケーブルなら左右で長さが2倍以上違っても、やはり問題なく音像は中央に定位します。
スピーカーケーブルの長さを同一にせず、アンプとスピーカーの距離に合わせることで、スピーカーケーブルの長さは短くて済むので無駄な出費を避けることができます。また、ラックやスピーカーの後ろでとぐろを巻くこともなく、見栄えも良くなるので、断然お薦めいたします。
逸品館の試聴室では左右のスピーカーケーブルの長さを同一にしていませんが、訪れるお客様から、音像定位が抜群によいという評価を得られています。
まれにオーディオ雑誌などで「スピーカーの長さの左右同一」から始まって、電気的な条件の同一性や潔癖性に執拗なまでのこだわりを見せる評論家や技術者を見受けますが、その説明は無意味です。
ケーブルの長さや、インピーダンスの不適合など、電気的な条件の不一致は、ルームアコースティックなどの「音の反射の影響の大きさ」から見れば、実に微々たるものなので、それが故障の原因とならない限り、聴感で大丈夫と感じられるなら自信を持って無視していただいて結構です。
余談になりますが、サラウンドの秘訣は、5本のスピーカーを「同一平面」に配置することです。正確な方向性の再現を望まれるなら、センタースピーカーをスクリーンの枠外に設置することと、リアスピーカーを天井に設置するのは絶対に避けて欲しいと思います。
スピーカーの角度をリスナーの方向に向けたくらいで「脳」は容易く騙されたりしないのです。
逆に、レーザーセッターを用いてフロントスピーカーを設置すれば、センタースピーカーを使わなくても(バーチャルモード)セリフは、ちゃんと画面中央奥に定位します。
映画館ほど広くない普通の部屋(12畳以下)ではスピーカーの数を増やせば増やすほど、「スピーカーを空間から消す」のが難しくなります。
もし、「スピーカーから音が聞こえるようなサラウンドのセッティング」をお望みでないなら、スピーカーは5.1Ch以上増やさないことが賢明だと思います。

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