スピーカーセッティングの基礎
音の良いスピーカーの設置位置
図1 | 図2 |
A-Aのようにスピーカーを部屋の壁に対し並行に設置すると音響エネルギーは1~4のように反射し5の位置で逃げ場を失いぶつかり合って大きな濁りを生じます。(図1) また、スピーカーと部屋の壁との距離をピタリと合わせ、左右対称に設置した場合も、壁からの反射波の発生する条件が揃ってしまい、距離に起因する強い「特定の定在波が生じ」やはり音を大きく濁らせる原因となります。
これまで推奨されてきた、「対称形」にスピーカーを設置するやり方は、見た目とは逆に、音が良くない方法だったのです。
スピーカーを部屋の壁に対して並行におくことは避け、A-A線を壁に対し斜めの角度を持たせて設置すると音響エネルギーは1~6のように循環する形に流れ、強くぶつかり合って濁りを生じることなく、徐々に減衰してゆきますから、これだけでも相当に音の広がりや明瞭度が向上します。(図2)
有効な吸音材と反射パネルの設置位置
図3 |
次に、ルームアコースティック調整アクセサリーを使った、テクニックについて説明しましょう。 スピーカーセッティングの基礎で「壁とスピーカーが並行になってはいけない」と説明し、壁とスピーカーとを斜めに設置することで悪影響を低減できました。
しかし、天井と床とスピーカーは斜めの角度をつけて設置することは出来ません。そのため、スピーカーから出た音は直前の床と天井で反射を繰り返してフラッターエコーを生じ音の広がりと明瞭度を大きくそこねてしまいます。(天井と床の間で音が反射を繰り返しぶつかるたびに大きな濁りが生じます)
そこで、スピーカーの直前とスピーカーの間に吸音材として「毛足の長い絨毯(ムートン)」を敷いてください。
スピーカーの背後の壁には吸音のため出来るだけ「天然素材(ウールや絹、綿など)」の厚めのカーテンを設置し、背後から音が反射するのを防ぎます。
ここで、吸音ばかりに気が取られると「部屋の響きが不足」して、音の精気がなくなり躍動感が殺がれますので、スピーカーの背後で乱反射を起こし、音の暖かみや生々しさを補いましょう。
使用する反射パネルは、サーロジックから新発売された[FW1200・ファイヤーウォールシリーズ]が最適です。
このパネルには、東芝EMIでレコーディング・スタジオの設計などに携わっていらっしゃった、サーロジック代表の村田さんの高度な知識と経験が生かされています。
背後の壁のコーナーにも乱反射パネル(音響エネルギー拡散パネル)を取り付けると完璧です。
部屋の中で音を循環(拡散)させる
図4 | 図5 |
平行に置いた鏡の間に、「何かを置く」とその像は無限に反射を繰り返し沢山の「虚像」が作られます。部屋の壁で「音が反射」するときにもまったく同じように「原音の虚像」が作られることがあります。それが、先ほどから悪者扱いしている「フラッターエコー」の正体です。問題は、反射そのものではなくて「反射によって生じる原音の虚像」がいけないのです。 距離や角度、形などの反射の条件が揃うと「同じ反射が繰り返されて虚像が生じます」から、部屋の中で音が反射を繰り返し消えてゆくときに「できるだけ同じ経路を通らないように注意する」ことで、この邪魔な「虚像」の発生を抑えることが出来るのです。(図5)
図4はよくあるステレオの置き方で、黒線と赤線が同じような経路で反射していることがわかります。それを図5の帳に調整すると黒線と赤線が重ならないように改善されたことがわかります。
お薦めのできる部屋のコーナーを利用した置き方
図6 |
このような設置ができれば”完璧!”です。 この状態でもスピーカーは決して開きすぎではありません。
実際に、逸品館の3号館では、このようなセッティングでPMC/FB-1が、メーカーの担当者がいつも驚くほどいい音で鳴っているのです!
最後に上下方向の吸音(拡散)ポイントを考える
図7 |
図8 |
音がぶつかり、「虚像」が発生しがちなポイントで見落とされがちなのが天井の四隅、特にリスナーの背後です。
音は反射する性質と、面に沿って流れるように進む両方の性質があります。床には色々とものが置いてあり、床に沿って流れる音は適度に拡散されぶつからず、歪みを生じにくいのですが、天井には障害物が無いため壁や天井に沿って流れてきた音が集まる四隅では、音が行き場を失って互いに激しくぶつかり合い、大きな濁りを生じています。(図7の爆発マークの上二つの位置)
また、スピーカー直前の床と天井の間では、音が往復反射を起こし強いフラッターエコーを発生しています。(図7の中央の爆発マークの位置)
そこで(図8)の灰色のポイントに吸音(拡散)処置を施せば最も効果的に音の濁りを除去することができるのです。
ルームアコースティックの秘訣は、太極拳のように円を描き、そして柳の木が風を受け流すようにやさしく、音のエネルギーをぶつけず上手く循環させてやることです。そうすれば、音がぶつかって生じる音の歪は軽減され、広がりと透明度を大きく損ねる嫌な濁りが発生せず、あなたのリスニングルームにもコンサートホールのような広がりと「アコースティックで綺麗なエコー」が生みだされます。