StereoSound(ステレオサウンド) 159号「アンプジラ 2000は凄かった!」

アンプジラ2000幾度となくこの広告欄で愚痴ってきたことだけれど、現在ラインナップされている高額オーディオ製品(スピーカーは除く)には、価格が高くなった割に性能(音質)がそれに見合って向上していると感じる製品が少ないように感じる。それを裏付けるかのように、ここ10年間で逸品館のオーディオ部門の売り上げはほぼ倍増したにもかかわらず、単価50万円を超えるオーディオ製品(スピーカーは除く)の売り上げは逆に減少傾向にある。その穴を埋めているのが、高額なケーブルやアクセサリーだ。確かに、これらのジャンルの製品は過去にないほど種類も多くなり、また単価も上がっている。そして、実際の効果も高い。逸品館のお客様は、装置を買い換えるよりアクセサリーの追加で「音質改善」を行われていらっしゃるのが現状だ。
ただし、誤解を招かないように付け加えておきたいのだが、私は大阪人らしく「コストパフォーマンス=価格に見合うだけの価値」を強く求めているだけで「価値が認められる製品」なら、どこよりも積極的に販売を行ってきた。事実、過去にはFMアコースティック611Xをまとめて10台仕入れ、追加も含めて15台近く販売していたこともある。当時の逸品館の規模から考えれば、それはすさまじいばかりの大量販売だったが、それは私が611Xというアンプに心底惚れ込んだからなし得たことだ。
現代高級アンプの多くは、むやみに鮮度を追って音を冷たく音楽を無表情にしてしまったが、それらとは異なる良い意味でソフトを上手く聞かせるFMアコースティックの音作りには、独自の芸術性や世界感が感じとれる。音質と表現力、同じに見えて実は相反する二つの要素を実に巧みにまとめ上げた、その高いバランス感覚は他に類を見ない。発売から10年を経た今も、611Xの音質は色あせるどころかさらに輝きを増して感じられるほどだ。しかし、悪いことにFMアコースティックは、年を追うごとにどんどん高価になり、とうとう庶民にはまったく手が届かない高嶺の花となってしまった。
この素晴らしい611Xとの出会いを最後に高額なセパレートアンプで「心底これは凄い!」と感じる製品と出会えない。胸を張ってお薦めできる高級品があまりにも少なくなったため、一時期は真剣にオーディオショップを畳もうかとさえ思ったほどだ。そんな私に活を入れたのが「AIRBOW」という自社ブランドの立ち上げと「サラウンド」との出会いだった。「サラウンド」については、今までにこの紙面でお伝えしたこともあるし、今回の主旨とは関連しないので割愛するが、AIRBOWという製品作りを通じて比較的安価に自分の理想の音を実現できるノウハウを手にし、私の高額オーディオ離れはさらに決定的なものになった。
メーカーや輸入代理店から新製品を借りては見たものの「音はどうでした?」と聴かれて言葉を失う。やはり「聞かなければ良かった・・・」と感じる製品が多い中、ひときわ光るアンプを見つけた。それが、アンプジラ2000だ。このアンプには見分不相応な安物のAIRBOW IMAGE11/KAI-Sを気まぐれに繋いでその音を聞いたとき、私は久しぶりに鳥肌が立った。透明度、切れ込みの鮮やかさ、見事な分離感、まさしく最高級のレコードの音を彷彿とさせるような「美音」がその色気のない筐体から発せられるとは夢にも思わなかった。意表をつかれたこともあって、そのサウンドには心底「やられた!」と「これを待っていました!」が入り交じったような、言いようのない感動を覚えた。この感覚はFMアコースティックとの出会い以来かもしれない。
その時アンプジラに繋いだプリアンプは、CU80/SpecialでCDプレーヤーはCC4300/Special。いずれもAIRBOWブランドで価格以上の音を出せる自信はあるが、これが最高の音だと言い切れる製品ではない。しかし、それをものともせずSon of Ampzilla 2000は、IMAGE11/KAI-Sから私が目を丸くするほどの音を絞り出した。さらにスピーカーを繋ぎ換えてテストをしてみたが、その素晴らしい音質は変わらなかった。詳しいテスト結果は、弊社のホームページに詳しく掲載したからここでは触れないが、即座にその試聴機を買い込んで毎日聴いていると言えば、答えは自ずとわかっていただけると思う。
電源オン-オフに伴うポップノイズの発生や、やや過大な残留ノイズ、トランスのうなりなど輸入品特有の問題も多いし、何よりも私の怠慢でご紹介が数年も遅れてしまったから「なにをいまさら!」とおしかりを受けるのを百も承知で申し上げる。是非一度このアンプを「きちんとした条件」で聴いて欲しい。90万円(ペア・税別)であのFM611Xに勝るとも劣らない「感動」が手に入るかも知れない機会を捨てるのは、あまりにも「もったいない」から!

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