ホームシアターファイル 36号「今後は、フルスペック・ハイビジョンが高画質の主流になる」

衛星デジタル放送や地上波もデジタル放送が本格的に普及を開始し、私たちが見る画像は「ハイビジョン」が多くなっています。「ハイビジョン」には「きめ細やかさ」が異なるいくつかの種類(規格)がありますが、その最高画質は、「1080i」と決められています。この「1080i」を越える高画質規格としてNHKが「スーパーハイビジョン」の研究と実験を重ねていますが、「1080i」に比べ画面の縦方向のきめ細やかを一気に4倍(有効走査線が1035本から4320本)にアップしなければならず、現行の放送-受信システムとまったく異なるインフラが必要とされるので、実現にはまだまだ長い時間がかかります。つまり、これから10年以上にわたり「最高の画質」を実現する「1080i」にフルに対応するためには、最低でもプロジェクターやディスプレイの画素は「1920×1080画素=約207万画素」を越えなければなりません。しかし、現在販売されている「ハイビジョン」と呼称されるプロジェクターやディスプレイの多くは「100万画素程度」で「1080i」の高画質を完全には生かせません。そこで、「1080i」をそのまま表示できる「200万画素を越える」プロジェクターやディスプレイを「フルスペック・ハイビジョン」と呼び区別しています。これらの「フルスペック・ハイビジョン」対応製品が、今後の高画質製品の主流となります。ホームシアターで「高画質」をお考えなら、「フルスペック・ハイビジョン」をお求め下さい。

画素変換の問題

しかし、画素が増えるとやっかいな問題も生じます。私たちが普段見るハイビジョン以外の番組や「DVD(NTSC)」に収録されている映像は、「1080i」に比べると画素が非常に少なく(DVDでは、720×480=345,600画素しかありません)これらのソースを「1920×1080=2,073,600画素」のディスプレイに表示するためには、約35万の画素を200万画素の6倍に増やさなければなりません。つまり、実際には収録されていない「165万画素」を人間が不自然に感じないように、前後の映像を比較する、動きを区別するなど複雑なアルゴリズムで演算し毎秒30枚も生成するのです。この演算を「アップコンバート」と呼びますが、プロジェクターやディスプレイの画素が高密度(数が多い)であればあるほど「演算が飛躍的に複雑」になります。この「アップコンバート回路」の出来が悪いと、地上波放送やDVDなどのハイビジョン以外のソースを表示したとき、砂をまいたようにザラザラしたり、小さなモザイクのようなノイズ(ブロックノイズ)が表れ極端に画質が劣化します。最新型の液晶式フルスペック・ハイビジョンプロジェクターや安売りされているプラズマTVの一部では、地上波アナログ放送やDVDが滲んだり濁ったり、より画素の少ない製品よりも画質が悪く感じることがありますから、「フルスペック・ハイビジョン」のプロジェクターやディスプレイを選ばれるときには、かならず「DVD」や「地上アナログ放送」をチェックしてください。

「スペックは高ければよい」のではない

「高スペック」が必ずしも「最良」ではないと、映像を例にあげてご説明いたしましたが、音声にも同様の問題があります。現在、発売されているAVアンプのほぼすべての製品が7.1chに対応していますが、5.1chの信号を7.1chに変換するときに「重大な音質の劣化」が引き起こされるのをご存じですか?音声の説明は難しく長くなるので詳細は割愛しますが、ホームシアターでのスピーカー配置は「6.1ch」がベストで、それに次ぐのが「5.1ch」。へたな「7.1ch」は「6.1ch」はおろか「5.1ch」よりも悪くなることが多いようです。カタログの数字は、「大きい方が良い」、つかえるものは「すべて使い切る方が良い」を単純に思いこむのは「大きな間違い」です。スペックが同じでも高価な機器には、高価な理由がありますし、数を増やせば生じる問題もあります。インターネットやカタログではわからない「生の情報」をきちんとお伝えし、お客様に必要な製品を正しく選んでいただける「専門店」を逸品館は目差しています。


ホームシアターファイル 2007年 06月号 [雑誌]


カテゴリー: ホームシアターファイル, 社長のうんちく タグ: , パーマリンク