逸品館メルマガ008「身体感覚を大切にしよう」

梅雨入りした途端に雨が多くなりましたが、皆様いかがお過ごしでいらっしゃいますか?雨が降ると出かけるのが億劫になります。梅雨が明けると、今度は暑さが厳しくなって、やはりエアコンの効いた室内で過ごすことが多くなります。

こんなときパソコンは便利です。探し物には最高です。どんな商品があるのか?どこに行けば手にはいるのか?どこが安いのか?歩いて探す必要はなく、全国の情報を、時には全世界の情報を一瞬にして検索することが出来ます。

そういえば「グーグルで衛星写真が見られる地図検索サービス(他のサイトでも多くなってきました)」がちょっと前から始まっているのをご存じですか?
この機能を使えば、世界各国の「街のようす」や「砂漠がどれだけ広いのか?」すぐに見ることが出来ます。雨で出かけたくない気分の時でも、この衛星写真を見るだけで「世界旅行した気分」になってしまうほど、興味深い情報提供のあり方だと思います。

こんなに便利に「私たちのあきれるほど貪欲な好奇心」を満たしてくれるインターネットですが、それに頼りすぎると大きな弊害がもたらされます。代表的な弊害は、「細かい情報(情報の背後関係)が見えなくなる」ということと「身体感覚が失われる」ということではないのだろうかと考えています。

例えば、私たちは近くへ行くときは「歩いて」行きます。少し遠いところなら「自転車」もっと遠いところへは「自動車」や「電車」、そして「飛行機」と距離に応じて「移動速度の速い交通機関」を使います。これらの交通機関も人間の「移動距離=情報収集能力」を飛躍的にアップさせました。でも、いつもは「自転車」で通り過ぎる道を「歩いて」見たらどうでしょう?こんなところに「こんな建物があったんだ」とか「アスファルトに埋まっている小石」とか「道ばたに生えている雑草とか」普段は見落としているものが沢山あることに気づくでしょう。それから、風の温度や空気のにおい・・・。自転車で通り過ぎるときとは「比較にならないほど様々な情報」が「身体器官=5感」を通じて体に流れ込むのが感じられるはずです。

私たちがインターネットを手に入れたのは、ここ10年ほどのことです。自転車や車だって100年前はありませんでした。それ以前の主な移動手段は「自分で歩くこと」でしかなく、情報収集方法も「5感」に頼る以外はなかったのです。

自分の足で歩き、自分の5感を通じて「知る」こと。それが私たち人類の本来あるべき姿です。ここ100年の科学技術や産業の進歩により、私たちの生活は一変しました。でも、私たちの「体」は、ほとんど何も変わっていません。そんな早いサイクルで「人間という種が進化」することはありません。

私は車を好きだと以前のメルマガに書いたことがありますが、年間16戦中で15戦の勝ち星を挙げた「マクラーレンF1」を設計したゴードン・マーレイという天才エンジニアが「設計にはCADを使わず製図台で手書きで図面を引く」とカー・グラフィックに書いていたのも印象的でした。私も同感です。デザインや文章を考えるときどうしてもパソコンに頼ってしまいますが、そうすると「発想がパソコンの機能向きに限定」されてしまうのです。パソコンでやりにくいような「連続に変化する曲線」などの「アナログ的な表現」が消えて「デジタル的な表現」が中心になります。創造力や発想も「デジタル的」になってしまい「人間的なぬくもり」が消えてしまいます。

だから、雨が降ったときも、暑いときも、たまには外に出て「自分の脚」で歩いてみませんか?きっと今までとは違う発見に出会えるはずです。きっと今までよりも心に響く何かが見つかるはずです。人間が人間らしい心であるために、自分自身が人間らしくあるために、時には「技術の力から離れてみる」とことはすごく大切だと思うのです。

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