ホームシアター(HOME THEATER) 36号「出来ることからはじめよう」

プロジェクターや大型テレビが安くなっています。5年ほど前と比べると、同じ性能のモデルで価格は1/2~1/3くらいに下落しました。5年前の100万円と同等のシアターシステムが今なら30~50万円で手にはいるのです。こんなに安くなったシアターシステムを50~100万円もかかる内装工事費を別に支払って、小綺麗にインストールする価値はあるのでしょうか?もちろん、それは個人個人の判断にもよりますが、機器の性能向上が著しいこの分野の製品をインストールするなら、5~10年単位でシステムが簡単に入れ替えられるような設計をするべきです。例えば、今のサイズや重量なら天井の補強が必要な高画質プロジェクターも数年先にはもっと小さく軽い製品が発売されるでしょう。OPTOMAのHD81のようなセパレートタイプのプロジェクターなら、すでに天井の補強は必要ありません。もちろん、壁や天井に配線を通すか、上手く隠蔽しなければなりませんがこの配線にも注意が必要です。5年前には「映像デジタル伝送」いわゆる「HDMI」を搭載した製品は皆無でした。しかし、これからはハイビジョンをHDMIで伝送する時代です。Sケーブルやコンポーネントケーブルは、使わなくて良いのです。逆にHDMIケーブルが入っていなければ困ることになります。将来的には、このHDMIに変わってLANケーブルで映像機器を接続するようになるかも知れません。その時に、また壁や天井を剥がして工事をやり直しますか?かなりのコストが無駄になるでしょう。
このようにホームシアター製品は、家電品の中で最も規格が変わりやすく進歩が早いのです。この状況は、今後も変わりません。なぜなら、新しい規格を打ち出すことが業種全体の活性化と利潤をもたらすからです。特許、特殊な生産技術、それらは時の流れと共に期限が切れ、一般化することにより利益を生まなくなります。とめどなく「変わり続けること」。それが先進各国(特に日本)が利益を確保し続けられる唯一の手段なのです。話が大きくなりすぎましたが、製品が安くなるのを待っていたり、もう2度と工事することがないよう綺麗にインストールしよう、という考え方はホームシアターを楽しむときには、あまり役に立ちません。変化が激しいこの分野では、思い立ったときに出来ることから始めるのが一番合理的な方法です。値下がりする前に、思いっきり楽しんで元を取る。それが一番お薦めな楽しみ方です。
ホームシアターは決して難しくありません。ホームシアターを難しくしているのは、「メーカーの垣根を越えた豊富な情報」が提供されていないからです。例えば、A社とB社の製品を繋ぐと、どのような機能が使えるのか?あるいは、どのような不便が生じるのか?販売店や販売員はおろか、メーカーのお客様相談センターの担当者でさえ答えられないような難問が多すぎるのです。それは、すでにお話ししたように「変化が激しすぎる」ことが大きな原因となっています。今や、デジタル家電とくにデジタルAV機器選びはパソコンのそれよりも難しくなり、実際にどのように動作するのかは「繋いでみないとわからない」状況です。もちろん「絵や音が出ない」などというひどい問題は発生しませんが、後で「あっちのほうがよかった」などと言うことがないように事前の下調べが大切です。そこで逸品館では、お客様に最新の最良の情報を提供するために、出来る範囲内でプロジェクターやDVDレコーダーのテストや機能の調査を行いそれをホームページで公開しています。その「結果」をご覧になられれば、ホームシアターの機器選びの大きな助けになるはずです。
ただし、一つだけお願いしたいことがあります。ホームページをご覧になり機器を選び「一番安い」お店で購入なさるのはご自由です。しかし、「一番安いお店で購入することを前提」としながら、電話やメールでその内容をしつこく確認したり、店頭で必要な情報をすべて「盗む」のはやめていただきたいのです。我々は決して「慈善事業」で販売店を運営しているのではありません。私たちはお客様に「誠意」を尽くしたいと考えています。どうかその気持ちだけは、裏切らないでください。


ホームシアター 2007年 09月号 [雑誌]


カテゴリー: ホームシアター , 社長のうんちく タグ: , パーマリンク