AudioAccessory(オーディオアクセサリー) 135号「“今冬” 注目の新製品」

毎年、この時期から年末にかけて「ランキングラッシュ!」が始まります。そもそも「ランキング」とは何のためにあるのでしょう?答えは単純明快「売るため(宣伝広告のため)」です。お考え下さい。もし「本当に良いもの」がたった一つだとしたら?特定の製品に注文が殺到したら、他の業者は「廃業」しなければなりません。業界の安定を考えた場合「一人勝ち」は危険です。逆に考えるなら「一人勝ち」を許さない、広く浅い「適度に混乱した情報を振りまくことで消費者を煙に巻く」ことが、経済効率が一番高いのです。
話を次に進めます。私たちが製品を購入するときは「まず予算」を決めます。決めた予算に近い商品から検討を開始し、判断材料が揃ったら購入を決めます。この時の大前提は、「価格と性能/品質は比例する」ことです。高級品、すなわち価格が高いものは、安いものに「負けてはならない」という宿命があります。当然、宣伝広告でもっとも守らなければならないのは、この「価格と性能のヒエラルキー(上下関係)」を壊さないことです。
ここで話を少し変えましょう。健康食品がブームになって久しいですが、それらの広告を考えてみましょう。健康食品のコマーシャルには「この食品を使っていたから健康を保てた」という、年齢の割には若く見え、健康そうな人が必ず登場します。健康という結果を見せて、その過程を肯定するやり方です。タレントの「生い立ち紹介」も同じようなものです。麻薬がらみの犯罪に手を染めた、タレントがいたとします。マスコミは、そのタレントの見かけと結果を結びつけ、特定の写真(可愛く映っている、もしくは犯罪者のように写っている)を何度も繰り返し報道することで、民衆(大衆)に「特定のイメージ」をすり込んで行きます。マスコミが断片を継ぎ合わせて作った「架空のイメージ」で私たちの考えは汚染され、誘導されます。これがマスコミュニケーションにおける「報道の真実」です。そして、私たちはそれにまんまと騙されます。繰り返し報道されることで、私たちは多かれ少なかれ、「ありもしないことを真実(事実)」と思い込まされるのです。
話を元に戻しましょう。論点は二点です。一つは、報道や広告は少なからず誇張、改変されたものであり「100%信用できない」ということです。これはわかりやすいと思います。もう一つは、「人間は結果から方法の可否を判断する」ということですが、これについてはもう少し説明しましょう。例えば「育て方」が全く同一の人間が二人いたとします。一人はヒーロー(英雄)になり、もう一人はヒール(悪者)になったとします。私たちは、ヒーロー/ヒールという「結果」から、「育て方」が成功であったか失敗であったかを「決めつけ」ます。そして、次第に「育て方」が同じであれば、「結果」も同じになると考えるようになります。しかし、それは非常に短絡的で危険な考え方です。「育て方」にすべての責任を押しつければ、自分には責任がなかったかのように錯覚するからです。自分の中に原因を求めなければ、成長はありません。成長がなければ、成功もあり得ません。たまたま上手く行ったことにこだわっても、次の成功はないのです。
この問題をオーディオに当てはめて考えましょう。特定の製品や技術・材料などを使ったとき「たまたま良い音」が出せたとします。良い音は、それと同じ「製品・技術・材料」があれば出せると思い込むようになります。しかし、その時出た良い音は「ある種の組合せ(部屋やソフト、体調も含めたあらゆる環境)」が生み出したものであって、けっして「選んだ製品やアクセサリー」の効果ではありません。
再び最初の話に戻りましょう。広告は「結果」から、商品がよいと導き出します。ランキングが高い商品は良いと導かれます。でも、そこには「ひとかけらの真実」すら、存在しないかも知れないのです。過去の名器へのこだわりも同様です。特定の機器や技術・材料などに執着し始めた瞬間から、良い音が出せなくなってしまいます。大切なのは、自分の耳を疑わないことです。
「雑誌にあまり掲載されることがない、逸品館のお薦め商品」の一部には、「30~60日のお試し期間(返品可能期間)」を設けています。前評判や噂よりも「お客様ご自身の耳で判断頂くこと」が、何よりも大切だと考えているからです。ご購入後の「良い音探し」のお手伝いも、可能な限りお付き合いさせて頂きます。

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