2011年を迎え、オーディオは「新たな時代」を迎えようとしている。レコードから始まったオーディオ文化は、アナログで「再生芸術」の頂点を極め生演奏と同等の地位を得るに至った。アナログはやがて主役の座をデジタルに譲り渡すが、デジタルがもたらした「簡便性」はオーディオ人口を飛躍的に増大させた。少なくとも日本では、音楽を一日に一度も耳にしない人はいないだろう。さらに音源がメディアCD(ディスク)からネットワーク(データ-)へと変われば、従来とは比べものにならないほど多くの「音源(演奏記録)」がたやすく入手できるようになる。オーディオ不況と言われ続けているが、それは「全体を見ない」からだ。
懐に金が転がり込まないからといって、オーディオが衰退しているわけではない。不景気、不況と言われ続けて久しいが、それは「コストダウン」によって、人手が減らされた結果に過ぎない。仕事が減ったわけではなく、多くの仕事が人の手を離れただけなのだ。オーディオも同じで、録音~再生のプロセスの「省人間化」は、デジタル技術の導入によって一気に加速した。結果として音楽は「安く」、「早く」手に入るようになった。消費者から見れば、それは「恩恵」に違いない。利益を出せるかどうかは、我々の努力の問題だ。
デジタルの波に乗り、ここ数年台頭した「PC/ネットワークオーディオ」は、正にその主流だ。PCをトランスポーターとして活用すれば、低コストで音作りが楽しめる。オーディオの目的が「いろいろな音を聞くこと」であれば、これほど理にかなう低コストな方法はこれまでにはない。しかし、オーディオの目的が「よりよい音を聞くこと」であれば、この分野はまだまだ探求の余地がある。まず、PCの音が悪い。電気楽器ならまだしも、精密で複雑なアコースティックな音源を再生しようとすれば、PCはCDプレーヤーに遠く及ばないことをご存じだろうか?PCは汎用機であって専用機ではないから、いろいろな仕事をさせるのには向いている(いろいろな音を出すのには最適)が、専用の仕事をさせるには向いていない(最高音質を求めるのには不向き)。音の良いPCを作ろうとすれば、高級CDプレーヤー以上のお金がかかる。しかし「謎が多い」ということも、オーディオを活性化させる重要なポイントだ。
やがてネットワークオーディオ関係機器も、CDがそうであったように「アナログ回路(アナログ部分)」の重要性を認識するだろう。一方で変化は常に何らかの痛みを伴う。しかし、それを乗り越えたとき未来は大きく広がる。メディアの変革は25年ごとと言われているが、CDが登場してからおおよそ30年の2011年から、オーディオは新たな時代に入る。いずれにしてもオーディオに新しい風が吹き込まれることを歓迎したい。
懸念もある。デジタルの台頭と反比例して衰退する音楽文化の中から、今後よりよい音楽が生まれるかどうか?それは大きな問題だ。しかし、落胆する必要はまったくない。CDを超える音質のハイビット、ハイサンプリングの音源がダウンロードでより簡単に手に入るようになれば「高音質音源」に困る必要はなくなるし、著作権の問題さえ解決すれば、数が売れないという理由で絶版になったCD(音楽コンテンツ)もダウンロードで再配信されるに違いない。今以上の音質の音源、絶版であきらめていた録音がダウンロードで鮮やかに蘇る。オーディオファンと音楽ファンにとって、これほど喜ばしいことは他にない。交響曲の多くが時に磨かれてその輝きを増したように、遺された録音も時代に磨かれて、その輝きを増すのだろうか?ダウンロードで演奏に永遠の命が与えられた今、その可能性は非常に高い。時代を経て語られる名画のように、録音された演奏が語られる時代がやってくるだろう。
逸品館では時代に合わせ、最新CDプレーヤーのTAD D600 Esoteric K-01を展示導入すると共に、高音質クロック・ジェネレーターAntelope Audio OCX、PCに対応する高音質フォーマット変換器、Brainstoam DCD-8などをそれらの機器と合わせて展示し、CD/SACD/DVD/DVDオーディオは無論、メモリー記録の音楽ファイルの高音質再生にまで展示機を対応させている。さらに驚くべきは、オリジナルのSPUをはじめとする100種類に及ぶカートリッジ(非売品)やオリジナルのウェスタン300B(非売品)を展示し、アナログレコードを超高級アナログプレーヤー(30万円のMCカートリッジ装着)で再生できるシステムを備えていることだろう。今の3号館は、まさに「新旧オーディオ百花繚乱」状態にある。そうそう、TANNOY Kingdom Royalも展示導入した。こんな時代だからこそ、より「贅沢にオーディオを楽しんで欲しい」。私は心からそう願ってやまない。
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