AudioAccessory(オーディオアクセサリー) 122号「Supreme emotion」

Supreme emotion 昨年9月にEsotericのUX1をベースにしたチューンナップモデル「AIRBOW UX1 Supreme emotion」を、今年の7月にUX3SEをベースにした「AIRBOW UX3SE Supreme emotion」を発売した。ベースモデルが高価なため、チューンナップモデルは当然さらに高価にならざるを得なかったが、それぞれの製品は「価格以上の価値がある」と確信している。
逸品館がAIRBOWのブランドで発売している、オリジナル製品やチューンナップモデルは雑誌などのメディアで紹介される機会が非常に少ないが、それは音質やアフターサービスに問題があるのではなく「文字では音質や画質が正確に伝わらない」と私が考えるからである。付け加えるなら、ボランティアではなく経済活動としてニュースを配信しているメディアが「商業な利益」と「ニュースの内容」を完全に切り離して「無色透明」にするが難しいとも思うからだ。そのプライドを金で売ったのか、最近は大新聞やTVにしたって「何らかの配慮」によってニュースの公平性をねじ曲げることがあるように感じる。誰が見てもわかるようなスポーツの判定ですら「何らかの配慮で覆る」時代なのだ。目に見える形を持たない音や映像の評価など、推して知るべしだ。
音楽に対する半端じゃない思いから生まれ、共感していただけるお客様に育てられたAIRBOWの音質は「先入観なしにご自身の耳と目で確かめていただきたい」と強く願う。AIRBOWを聞いてみたいけれど大阪は遠すぎるというお客様や、是非一度自宅で試してみたいというお客様のご要望に応え、ごく一部の製品を除きAIRBOWには無償貸出機の準備がある。送料は有料だが往復の期間を含め、約一週間~10日の間でAIRBOWをご自宅でお試しいただける。購入する、しないに関係なく何度でもお試しいただける。AIRBOWに興味を待たれたなら、お気軽にご利用いただければ幸いだ。
現在、2~3の例外を除いてAIRBOWは逸品館以外では販売していない。それは「お客様と共に成長する」ために欠かせない、お客様からのフィードバックを得るために「すべての生産品が、自分の目の届く範囲内で使われて欲しい」と考えるからである。もちろん、公平で充実したアフターサービスを実現するためにも、販売店は私が一番よく知る(自分の運営するショップだから当然)逸品館だけに限定した方がよいと考えているからだ。お客様にはご不便をかけて申し訳ないと思うが、それがAIRBOWの音質の純度(パーソナルな製品としての完成度)を高め、製品開発の自由度を損なわない原動力になっているのでご容赦いただきたい。
今回、私が伝えたいのは、2台の「Supreme emotion」が実現した新世代のデジタルサウンドの素晴らしさである。Supreme emotionシリーズを発売するまでAIRBOWのデジタルプレーヤーのトップモデルは、ベルトドライブ方式を採用した高性能オリジナルCDトランスポーター「TL51/KAI」と、独立した3つのインバーター電源に完全に同期した内部クロックを持つDAコンバーター「DAC-1/CRYO/LIMITED」の組合せであった。もちろん、このセパレートCDシステムは、現時点でも国内外の最高級CDプレーヤーの音質に勝るとも劣らない自信はあるが、Supreme emotionは、このシステムの音質を軽々と越えたばかりか、CDでさえほとんどのSACDプレーヤーで聞くSACDの音質をも凌駕するほど素晴らしい音質が再現される。それは、AIRBOWセパレートCDシステムの開発時に、「生演奏」を「AD変換」して録音せずそのまま「DAコンバーターに入力」し、アンプで増幅してスピーカーから再生する。あるいは、STAXの最高級ヘッドホンで音質を確認するという方法で「CDというデジタルフォーマットの実力」を徹底的にテストした私にとって信じられないことだった。
なぜなら、当時の最高の技術を結集してもCDのサンプリング周波数44.1KHzと量子化ビット数16Bitという容量では、音楽を完全に収録することが不可能という結論に達していたからだ。さらなる実験の結果、音楽を生演奏と過不足なく再現するには、サンプリング周波数は最低でも48KHz、量子化ビット数20Bitは必要だろうと感じられた。しかし、Supreme emotionは44.1KHz/16Bitという「枠の中」でそれを遙かに超える音を再現する。録音されていない音までも出てくるように聞こえるのだ。これは、CDでは音楽をレコードのようには楽しめないとあきらめていた私にとって、同時にCDの音に満足したことがない音楽ファンのお客様にとっても衝撃的な出来事だった。 私自身が信じられないほどの驚き。究極のサウンド。そういう意味を込めてこれらのプレーヤーには、Supreme(至高の)Emotion(感動)という名前を付けた。音質のみならず画質に関しても、これらのプレーヤーの実力は、驚くべき物でDVDがまるでフィルムのように色鮮やかに透明感のある奥行きを伴って再現されるといっても決して言い過ぎだとは思えない。
技術的な解説は、これらのプレーヤーの良さを語るための本意ではないので割愛したいが、それが実現されたのは「VRDS-NEO」というドライブメカの優秀さを切り離して考えることは出来ない。確かにP-0sやP-01/D-01の音は、機械的な硬さがあって情緒は薄かった。だが、P-03、D-03は明らかに違う。国産オーディオが初めてすべての海外製品を凌駕してそのジャンルの頂点に立った感がある。VRDS-NEOがある限りこれからは、海外製の高級デジタルプレーヤーの購入を検討する必要はない。なぜなら、4億円とも5億円ともいわれるVRDS-NEOの開発費を超えるほどの投資を行いドライブメカニズムを開発可能な海外オーディオメーカーがあるとは思えないからだ。
Esotericが技術の粋を尽くして生み出したP-03、D-03の登場で日本製品は、技術的にも感性的にも世界の頂点に立てることが証明されたように思う。それは「日本人」として心から誇れることだと思う。「愛国心」さえ感じられるほどの出来映えである。だが、それらの「音」を聞けば、そんな精神論的な「些細な話」は、きっとどうでも良くなるはずだ。音楽に秘められた熱いメッセージ、人が人を思う気持ち、すべてを支配してしまうほど激しい喜怒哀楽・・・。肌の色が変わっても、姿が違っても「人の心」には変わりはない、「音楽」に国境はないとその音は、訴えてくる。「音楽に秘められた熱情」。以前はそこまでは感じられなかったCDからでさえ「それを感じることが出来た」のが何より素晴らしいことなのだ。


Audio Accessory (オーディオ アクセサリー) 2006年 10月号 [雑誌]


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